プロフィール
宮浦健人
ポジション:オポジット
所属クラブ:ニサ(ポーランド)
生年月日:1999/2/22(24歳)
出身地:熊本県荒尾市
身長:190cm
最高到達点:347cm
利き腕:左
成績
チーム
スタル・ニサ
参加リーグ:プルス・リーガ(ポーランド1部)
参加チーム:16
レギュラーシーズン:8位
最終順位:7位
トシキの現地取材数:14試合
個人
試合数:34試合
セット数:90セット
総得点:86点
セット平均:0.96点
サーブ
本数:153本
得点:21点
セット当たり:0.23点
アタック
本数:135本
得点:63点
決定率:46.67%
効果率:28.89%
ブロック
得点:2点
セット当たり:0.02点
シーズンのふりかえり
我慢のシーズン、しかしサーブが強力な武器に
宮浦健人選手の海外リーグ1年目は我慢のシーズンとなりました。
2022/23シーズンに同様にヨーロッパで活躍した石川、髙橋、築城らがほとんどの試合をスタメンとしてプレーしていた一方、宮浦はほとんどの試合でベンチスタート。シーズン30試合以上あった中でスタートからプレーしたのはわずかに2試合だけでした。
チームが決まった段階でスタメンではなく控えが中心となることは本人もわかっていたことでしたが、「試合に出られないことがこんなにきついことだと思わなかった」とシーズン途中に話してくれたりもしていました。
ニサのスタメンオポジットだったチュニジア人のベンタラは、リーグの総得点ランキング3位に入るなどリーグ屈指のオポジット。来季はイタリアのビッグクラブであるペルージャに移籍を決めていることからもその評価の高さが伺えます。
このベンタラを退けてオポジットとして出場機会を得るのは至難の業でした。ベンタラはプレーの安定感も相まって、リーグでも一番交代されにくいスタメンオポジットだったと思います。
またオポジットは2枚替えでの起用も多いですが、ニサはスタメンセッターのズコウスキ(クロアチア)が身長196cmと宮浦より高くブロックが優れていたため、戦術的に2枚替えを使うこともありませんでした。
そこで今シーズン宮浦が任された役割がサーブでした。
シーズン初戦からリリーフサーバーとして起用されると、その後はほぼ毎試合リリーフサーバーとしてプレーしてニサファンに「サーブのケント」のイメージを浸透させ、サービスエースも次々と決めてそれが通常運転のようにもなっていきました。
今シーズンの宮浦の1セット当たりのサービスエース本数は0.23本。この数字は今季イタリアでプレーした髙橋藍とほとんど同じ数字(0.24)です。リリーフサーバーで各セットほとんど1順しかサーブのチャンスがなかった宮浦の数字とほとんどスタメンで出場してコンスタントにエースも重ねていた髙橋の数字がほぼ同じなんです。
一般的に1セット通して試合に出るとサーブは3順くらいするので、もし単純計算で宮浦がスタメンで出ていたときの数字は0.69本。これは今季のポーランドリーグ1位の記録(0.65本、ボワイエ(フランス))よりも上で、イタリアリーグ1位(0.59本、レオン(ポーランド))よりも上です。1試合最低でも2本のサービスエースを決める計算ですね。
また宮浦のサーブはそもそもブレイク率もとても高く、サービスエースがなくともブレイクはほぼ毎試合(毎回?)できていたように思います。特にビエルスコビャワ戦ではサービスエース1本にもかかわらず宮浦のサーブから8連続ブレイクを奪うシーンもありました。
こうした中で本人もサーブに関しては「大きく成長できた」と語っていましたし、自信を持って自分の武器であると言えるようになったのではないかと思います。
このポーランドリーグを通して磨かれた宮浦のサーブは、先日行われた中国との親善試合で早速その真価を十分すぎるほど発揮してくれました(フル出場は4, 5セット目のみながら6つのサービスエース)。
またサーブ強化にも繋がったポイントとしてもあげられますが、このポーランドリーグ期間を通してフィジカルがかなり大きく、強くなりました。
試合になかなか出られなかった分、試合翌日をリカバリーに充てる必要がないためオフの日でも筋力トレーニングをして肉体改造を行っていたそうです。190cmとバレーボール選手としては低い宮浦が海外選手の高さに対抗するためにジャンプ力を向上させるのはもちろん、相手ブロックにスパイクを触られてもそれを吹っ飛ばしてブロックアウトするパワーをつける必要性を痛感したと言います。
これについても中国との親善試合において、以前と明らかに違う高いジャンプからの轟音響き渡るパワフルなスパイクを見せてくれました。決定率もとても高かったと思います。
スタル・ニサが与えた影響
またニサというクラブも本人のバレーボーラーとしての成長に大きな影響を与えたことは間違いないでしょう。
ここではその理由を3つ述べます。
まずポーランドリーグがイタリアリーグと同様に世界トップリーグの1つであることはもちろん、自チームのニサにベンタラやゲルジョット(ポーランド)などバケモノ級の選手がいたことで、日々の練習から高いレベルでの経験を積むことができた点。
特に練習で何度もマッチアップしたであろうゲルジョットについては「いくら腕を伸ばしてもボールに触れるイメージすらわかない」と宮浦本人が言うほど高い打点を有していたということで、特に高さへの対抗というところではだいぶ意識づけられたと思います。
次にニサがチームとしてとても雰囲気がよく、仲がよかった点。
初めての海外リーグで語学も特に序盤は苦労が多かったと思いますが、チームメイトが優しく助けられた点が多かったようです。
特に家が近所だったブシェク(ポーランド)にはまだ自身の車が準備される前には練習まで送り迎えしてもらったり、ポーランドリーグや選手の詳しい話を聞いたり、家に招待してもらって家族ぐるみの付き合いをするなど「本当にいろいろ助けてもらった」と語っていました。それ以外にもオフの日にチームメイトとニサ近くのブロツワフという観光地に行ったりプライベートでも親交が深いチームで、だからこそ日頃の練習からリラックスしたいい精神状態で臨めていたのではないかと思います。
その仲の良さは試合中にもよく見受けられましたし、その中でも宮浦はサービスエースを決めたら主にゲルジョットから短パンが食い込むほど持ち上げられたり(笑)、シーズン最終戦ではサーブ時にベンチのメンバーから高々と「ケント」コールが起こるなど特に選手たちに愛されていたように感じました。もちろんそれは本人のキャラクターがベースにあったことは間違いないですが、チームがいい雰囲気だったからこそ宮浦自身の人柄がより生きたのだと思います。
3つ目はニサのファンの熱量です。
ニサはポーランドリーグの中でも特に熱いサポーターを抱えるクラブチームです。
ホームゲームは毎回ほぼ満席の状態ですし、応援もとても熱く激しいです。勝った時にはファンも一緒に全力で喜び、負けたときには愛のある叱咤激励が飛んできます。
本人も「自分がキャリアの中で体験したことのないような熱いファンがたくさんいて、本当に試合をやっていてすごくやりがいを感じますし、本当に自分もすごく熱くなれるなと感じています」と以前語ってくれていました。日本では見られなかった得点を決めた後に観客を煽る激情ミヤケン(笑)を見せてくれたのも、この熱いニサファンの存在があったからこそに他なりません。
このようにポーランドのニサという環境もまた宮浦の成長に大きく寄与したと思います。
22/23シーズンのベストバウト
第12節 vsグダンスク 1-3(20-25, 25-22, 14-25, 22-25)
チームとしては敗れましたが、オポジット宮浦として今季ベストパフォーマンスを見せた試合。
途中から出場してサービスエースこそなかったですが、チーム最多14得点、アタック決定率72%と大車輪の活躍。本当にあと自身のサーブでいくつかブレイクを取れていれば勝利とMVP獲得が十分ありえた試合だったと思います。とにかくサーブだけではなくオポジットとしてもポーランドリーグで通用するということをしっかりと見せてくれた試合でした。
またこの試合でグダンスクのアウトサイドヒッターとしてプレーしていたヴラズウィ(ポーランド)が僕の一番のお気に入りの選手で、彼と宮浦とのマッチアップが見れたことが個人的にはアツかったです(笑)。
この試合以外にも8連続サービスエースを決めたビエルスコビャワ戦も衝撃的でした。またスタメンで出たシーズン最後のオルシュティン戦もMVPに近いパフォーマンスでしたが、あの試合は相手のやる気がなさ過ぎたのでベストバウトには入れれませんでした(笑)。
トシキの思い
僕自身がポーランドに住んでいる関係で、今季一番現地に足を運んで話をしたのが宮浦君でした。
リリーフサーバーとしてはほぼ毎試合出場してサービスエースもコンスタントに決めてくれていて、それはそれでうれしかったわけですが、やはりなかなか前衛でプレーする機会がなく、それについて僕自身もとても苦しい思いでいました。
それでも毎回試合後には気さくにインタビューに対応してくれましたし、それ以外でも話をする中でより彼のキャラクターを知って、気づけばすっかり宮浦健人の大ファンになっていました。同じ九州出身というところもポイントが高い(笑)。
昨日の日本代表の記者会見で深津(兄)選手も言っていたように、一見クールに見えるんですが話してみるとけっこうおしゃべりで、それでめちゃくちゃバレーボールが好きなんですよね(笑)。
あと本当に努力家で、試合の映像もかなり見ているし、試合中もベンチで常にゴムチューブを使ってトレーニングしているし、控えに甘んじ出場機会が少ない中でも変に腐ることなく自分がやるべきことを淡々とこなしている姿がとても印象的でした。
だからこそ中国との親善試合での大活躍は本当にうれしかったです!!
(親善試合直後にうれしみを語るトシキ↓)
逆にライバルの西田の調子があまり良くなかったので、もしこのまま行けば今年は本気で日本代表のスタメンを狙えると思います。
このポイントは今年の代表シーズンの個人的に一番楽しみな点ですね。
西田および西田ファンには申し訳ないですが、仮にスタメンを奪われたらそれはまた西田自身にもさらに成長するいいきっかけになると思うので、日本代表全体としてもいいことなんじゃないかと思っています。
それでクラブチームに話を戻しますが、宮浦君の来季所属クラブの発表はまだないものの、おそらくポーランドのクラブでプレーできない可能性が高いです。
それでもことあるごとに「ポーランドいいっすね~」と言ってくれて、ポーランドとポーランドリーグをとても気に入ったみたいで、ポーランドのクラブでスタメンでプレーしたいと僕に話してくれていたので、来シーズンは難しくてもきっと近いうちにまたポーランドリーグに戻ってきてくれると思います。
来シーズンからリベロの高橋頌選手がポーランドでプレーしますし、あと個人的に髙橋藍選手にもポーランドに来てほしいので(笑)、パリ五輪後の2024/25シーズンには宮浦君を含めた3人の日本人がポーランドリーグでプレーするのを勝手に夢見ています(笑)。
改めて宮浦君、ポーランドニサでのワンシーズン本当にお疲れ様でした!そしてありがとう!!
とりあえず代表シーズン頑張って、またいつかポーランドリーグの会場で会いましょう!!!
写真:PLS, 筆者撮影