コラム

東京五輪メンバーに12名対する思いを語る⑥【アウトサイドヒッター編その2】

2021年7月4日

#14 石川祐希

お待たせしました。ラストはこの人、石川祐希です。よくぞここまでの選手になってくれた。

石川も例のごとく中3のJOC杯にて準優勝、自身も優秀選手に選ばれていたので名前だけはそのときに確認だけしましたが、当時の身長はまだ確か180cmちょっとで、そのときから190㎝近くあった同じ愛知選抜の山崎(現堺)や東京選抜として優勝もしていた秦(現サントリー)の方が注目度としては高かったです。その後星城高校に進学。僕の当時の星城の印象といえば、深津三男(現パナソニック)、渡辺(同)の代にインターハイと国体の2冠だったけど、その後県予選でも大同大に負けてなかなか全国大会にすら行けてない苦しんでるチームという印象。石川は1年時から山崎と共にスタメンで活躍し、星城はインターハイでベスト4になります。そのときは月刊バレーボールで1年生エースコンビみたいな紹介をされていて身長もまだ184㎝くらいでしたので、「よくあるデカいパワー系と小さいテクニック系のコンビかな」くらいにしか思ってませんでした。

しかし、それから2年生になるとインターハイでの優勝を皮切りに勝って勝って勝ち続けて、2年間で前人未到の6冠を達成しちゃいましたね。まず驚いたのが身長の伸び。高2で気づいたら190㎝くらいになってるじゃないですか。でもまだこの年までは若干山崎の方が身長は高かったし、パワーも彼の方がありましたね。でも2年の春高のときには更に背が伸びていて、もう高さもパワーも石川の方が上になっていたんじゃないかと思います。もともと技量がすごかった選手に高さが加わるととんでもないですね。高校バレー界ではもうチートと言わざるを得ない圧倒的なレベルでした。3年時のインターハイの決勝は現地で観戦しましたけど、相手の大塚がなんかもうかわいそうでした(笑)。スパイクは上から打たれるし、ジャンプサーブは4枚レシーブでも返せない。なんか同じ高校生だけどひとりだけ別次元。タレント集団でその後スタメン7人中6人がバレー選手になったメンバーの中でも圧倒的な輝きを放っていたのを覚えています。その芸術的とも言える石川祐希の圧倒的パフォーマンスを前にして、そのときから海外バレーに傾倒していた僕は「この選手は日本にいても意味ない!日本の大学リーグでプレーしても意味ないから早よ海外に行ってほしい!!」と猛烈に思いました。すると、その後たまたま男子トイレで隣になったので、「チャンス!」と一度は思ったもののやっぱり恥ずかしくなって声かけるのは辞めました(笑)。

でもその願いが届いたのか、翌年の中央大1年時にイタリアセリエAの強豪モデナに短期移籍します。この出来事はかなりの衝撃と同時にかなり嬉しかったです。その年のモデナはブラジルのブルーノやフランスのヌガペトなどかなり選手を集めていたので個人的にも注目していたんですけどそこに石川が短期ながらも合流するなんて思ってもいなかったもんですから。そもそも大学生が大学に籍を残したまま海外のクラブでプレーするなんて聞いたこともありませんでしたから。流石石川はこのあたりも別格でした。しかしこの時はほとんど試合には出られなかったと記憶しています。しかし、その後3,4年時にはラティーナプレーしこの頃から試合にも出るようになりましたね。そして卒業後は正式にプロ選手としてシエナ→パドヴァ→ミラノとセリエAでの階段を着実に登って行っています。過去にもセリエAでプレーした日本人選手はいましたけどこれほどコンスタントに試合に出て活躍した選手は他にはいなかったと思います。2020年2月、コロナが流行る直前にパドヴァで石川の試合を現地観戦しましたけど、やっぱりすごかったです。セリエAで普通に活躍していました。もうそこにいることが当たり前のように。その試合は強豪トレントとの試合でしたけど、トレントの選手と比べてもまったく引けをとらない。それどころかこの試合に関してはむしろ石川のパフォーマンスの方がすごかった。特にサーブが走っていて、相手は石川のサーブのためだけにレシーバーを入れるなどして対策をするほどでした。味方セッターからの信頼も抜群で、勝負どころのハイセットはオポジットよりも石川により多く上がっていたんじゃないかと思います。試合は結果的にフルセットの末トレントが逆転勝ちしましたけど、石川がここまで「セリエAの選手」なっていたことにただただ嬉しかったです。

石川のサーブ(筆者撮影)

石川は日本人バレーボーラーの可能性を切りひらいてくれました。これからのバレー少年たちはここを目指すわけです。今までは高校卒業したら、関東1部なんかの大学でプレーして、Vリーグでプレーして、代表になるという道しかなかったところに、海外で、世界最高峰のイタリアセリエAでプレーするという今まで見えていなかった選択肢を子どもたちに与えてくれたんです。これは大きなインパクトのあることだと思います。Vリーガーや日本代表を目指すのと、セリエAでスタメンを目指すのでは視点が全く変わってきますから。サッカー選手でもJリーグを目指す人とその先にさらに上の海外移籍を目指す人では全然意識が違うでしょう。そんな意識改革のパイオニアに石川はなってくれた。そしてそんな世界と戦う石川の姿が、近年の日本代表の進化にも大きく影響しているんじゃないかと僕は思います。

VNL2021でのパフォーマンスも素晴らしいかったですよ。特に、中垣内監督もおっしゃっていましたが、ネット際のプレーは世界トップレベルでしたね。あんなにリバウンドのうまい選手は世界にもいないですよ。惚れ惚れしました。もちろん勝負どころでの決定力も高かった。ただどうしてもサーブで狙われてしまいので、強いサーブで攻められて崩れる場面もいくらかありましたね。でもこれもまた伸びしろ。今でもすごい選手ですけど、石川もまだまだ進化しますよ。その内チャンピオンズリーグのファイナルの舞台で戦う姿を見られることを楽しみにしております。ま、その前に東京オリンピックですね。石川、日本人の可能性を世界に示してくれ!君にはそれができる!!

写真:FIVB

 

 

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