コラム

海外バレー選手紹介その3 ジェニア・グレベンニコフ

2020年6月21日

jenia

2010年代半ばから大躍進を遂げたフランス男子バレー。バレー会の「異端児」ヌガペトや小さな「マエストロ」トニウッティが中でも注目されがちだが、この男も忘れてまなるまい。ジェニア・グレベンニコフ。今、世界一のリベロとも称される「守護神」である。

 

プロフィール

Jenia

ジェニア・グレベンニコフ(Jenia Grebnnikov)

1990年8月13日生(29歳)
フランス、レンヌ出身
身長:188㎝
体重:74㎏
最高到達点:340㎝
ポジション:リベロ
背番号:2(代表)

所属クラブ
2008-13 レンヌ
2013-15 フリードリヒスハーフェン(ドイツ)
2015-18 ルーベ(イタリア)
2018-20 トレント(イタリア)
2020-  モデナ(イタリア)

代表歴
2011-

フランスリーグでの活躍と代表デビュー

ロシア人の元バレーボール選手を父に持つジェニアは、小さい頃から父の指導の元、バレーボールに励んでいた。もともとはアタッカーだったが、身長とパワーが足りなかったことから16歳でリベロに転向。アタックが好きだった(今でもアップで必ずスパイク打っている、キレッキレの)ため、最初はこの新しいポジションに苦心したが、U21フランス代表に選ばれるなどして徐々に頭角を現していく。

2010/11シーズン、父が監督を務める地元のレンヌで所属時にフランスリーグベストリベロ賞を獲得。この活躍が認められ、2011年から、往年の名リベロであったエノの後を引き継ぐ形でシニア代表にも初選出(背番号もエノと同じ2番)。この年のワールドリーグからほとんどの試合に正リベロとして出場している。翌2011/12シーズンは、レンヌでフランスカップを制して初タイトルを獲得。この年はベストリベロに加えてリーグのMVPにも選ばれた。しかしロンドン五輪予選ではカジースキとソコロフ擁するブルガリアに敗れて出場を逃した。

 

国外リーグへの移籍とフランス代表の躍進

2013/14シーズンからは、ドイツの名門フリードリヒスハーフェンに移籍。2シーズン在籍し、その間チームはドイツカップ2連覇、リーグも1年目には準優勝、2年目には優勝と好成績を収める。ちなみに2年目はフランス代表セッターのトニウッティも同じチームにいた。

このようにクラブでステップアップを遂げたグレベンニコフだったが、フランス代表にとっても2014・2015年は大躍進の2年間となった。まず2014年には、世界ランキング13位から世界選手権4位入賞の快挙を果たし、個人としても大会ベストリベロ賞を獲得した。そして2015年には、ワールドリーグ・グループ2で優勝すると、そのままグループ1ファイナルも制してワールドリーグ初優勝。さらにはその年の欧州選手権でもフランス代表として初優勝を手にした。またここでもグレベンニコフは大会ベストリベロに選ばれた。これを機に、フランス代表は現在につながる「強豪フランス」のイメージを築き上げ、またグレベンニコフ個人としても多くのバレーボール関係者やファンに知られるようになり、その後のキャリアに大きく繋がった。

Photo by FIVB

 

イタリア・セリエA進出とオリンピック

バレーボール選手として、また世界を代表するリベロとして確かな地位を築いたグレベンニコフは、2015/16シーズンよりついに世界最高峰、イタリア・セリエAの、その中でも「BIG4」と呼ばれる最強チームのひとつ、ルーベに入団する。このときも代表初選出時と同様、前シーズンまでルーベにいた元フランス代表リベロ、エノのポジションをそのまま引き継ぐ形での加入となった(なんだこのめぐり合わせは)。ルーベには3シーズン在籍し、途中外国人選手枠の関係で思うように試合に出られない時期もあったが、ユアントレーナやクリステンソンらスーパースター軍団と共に、リーグ制覇1回、コッパイタリア優勝1回、欧州チャンピオンズリーグ2位1回と3位2回など、チームに数多くの勝利をもたらした。

代表では、2016年に日本で開催されたリオオリンピック最終予選で勝利し、見事に2004年のアテネ以降12年ぶりの五輪の出場権を獲得。リオの前哨戦であったその年のワールドリーグでも準優勝し、メダル候補の一角としてオリンピック本番へ臨んだ。しかし、結果は予選敗退に終わってしまった。

Photo by FIVB

 

現在

2018/19シーズンより、ルーベから同じセリエAの名門トレントでプレーした。ここでもグルベニコフはリベロながら抜群の存在感を放ち、世界クラブ選手権優勝にも大きく貢献した。2020/21シーズンからは同じくセリエAの名門で、かつて石川祐希も在籍したモデナに移る。

代表では、相変わらず正リベロとして不動の位置を保っている。チームはリオ五輪後に半数ほどメンバーが変わり、2017年ワールドリーグ優勝、2018年ネイションズリーグ準優勝など好成績も収めている。しかし、2017年の欧州選手権でチェコに敗れたりするなど以前と違う脆さがあるように見える。それでも東京五輪予選ではしっかりとチームを仕上げ、見事に2大会連続のオリンピック出場を決めた。グルベニコフはオランダとの捨てセットを除いて全試合フル出場し、常にフランスのコートに安定感をもたらし続けた。

あと彼としては無事来年東京オリンピックが開催されることを願うだけだろう。

 

プレーの特徴

グレベンニコフは、リベロとして必要なスキル、サーブレシーブ、ディグ、セット、コミュニケーションなどすべてを高いレベルでこなせる。その中でも特に目を見張るのがディグだ。まずポジショニングが素晴らしく、正に気づいたらそこにいるといったレベルである。また反応も早く、どんなボールも瞬時に追いかける。実際に自分が見た試合でも、味方のブロックを抜けてきた相手のスパイクを連続で何本もあげて、そうとうなプレッシャーを相手スパイカーに与えていた。そうして彼を嫌がってブロックにシャットアウトされたり、スパイクミスをする場面も少なくなかったように見えた。リベロは直接点数を取ることができないポジションであるが、グレベンニコフはその鉄壁の守備でいったい何点取っただろうかと言わんばかりの活躍だった。リベロがゲームを支配していた。今のバレーボール界で、彼ほどチームからの信頼も厚く、敵にしたら嫌でかつ多くの観客を魅了するリベロは他にいないとだろう。

 

 

 

これからも要チェックや!!

 

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