宮浦健人選手への2023年1発目の取材は、2年連続でヨーロッパチャンピオンズリーグ制覇中の強豪ザクサ・ケンジェジンコジレとのアウェイでの試合となりました。
ちなみにザクサがチーム名、ケンジェジンコジレがホームタウン名で、通常はチーム名だけでザクサと呼ばれています。
そんな強豪との対戦なんですが、宮浦が所属するニサはリーグ前半のホームゲームではここに3-0のストレートで快勝しています。
確かにそのときのザクサはオポジットが控えの選手だったわけですが、それでも3-0で勝てたということで、今回も勝利への期待に胸を膨らませながら、できれば宮浦のサーブだけじゃなくスパイクも見たいななんて思いながら会場へ向かいました。
自宅のあるワルシャワから会場のケンジェジンコジレまでは電車を乗り継いで約5時間(この程度の長距離移動はもう慣れました(笑))。
ザクサのホームアリーナはポーランドの会場では珍しく駅から徒歩5分ほどの好立地なのですが、その最寄り駅がザ・無人駅です。
更に駅からアリーナまで行くには街灯のない林みたいなところを通らなければならず夜だと本当に真っ暗なのでスマホのライトが必須になります。
僕はこのルートは既になんども通ったので大丈夫ですが、初めて通ったときは昼間でもなんか勇気がいりました(笑)。
林を抜けて更に3分くらい歩くと会場に着きます。
会場に入ると歴代の優勝トロフィーらがお出迎えしてくれます。さずが強豪チームという感じ。
この日は20:30試合開始。僕は19時ごろに着きましたが、開場は1時間前からということで約30分エントランスで待ちぼうけです。
でも僕と同じようにすでに多くのファンも待っていました。
またその間にザクサの選手たちが一般客と同じ正面玄関からポツポツと会場に入っていっていました。こういう光景は日本ではあまり見られないでしょうね。
そしていざ場内へ入ります。
座席がザクサのチームカラーである青と赤で主に配色されていて統一感のある感じです!
両チームの選手たちも既にコート内に入っていました。
そしていつもどおりウォームアップを開始。
宮浦のパスの相手は安定のゼルバです。
ちなみにゼルバはアルゼンチン人ですが母語のスペイン語と英語の他にフランス語も話せるのだとか。
同じくモロッコ出身のエルグラオウイ、チュニジア出身のベンタラも母語はアラビア語なのですがフランスが植民地支配をしていた歴史からフランス語教育が浸透しているため、彼らが3人がお互いに話すときにはフランス語を使っているそうです。
英語とポーランド語だけでも混乱しそうなのに、そんな環境だと自分がどこにいるのかわからなくなってしまいそうですね(笑)。
そんな環境で頑張る宮浦、この日もアタック練習でキレのあるスパイクを披露。
Ins: toshikit71#宮浦健人 pic.twitter.com/5yobD5EeYW
— トシキ TOSHIKI (@toshikit71) January 16, 2023
本当はこれを試合でみたいわけですが今日は拝めるチャンスがあるのやら…。
そして宮浦のライバルでもある正オポジット、ベンタラのフリースパイクがこちら。
ワシム・ベンタラ🇹🇳のフリースパイク pic.twitter.com/q1JKYZZ2hZ
— トシキ TOSHIKI (@toshikit71) January 20, 2023
タッチネットはしているものの、バウントしたボールがほとんど天井まで上がるこの高さとパワーはやっぱりヤバいです。
一方のザクサにはこの試合注目選手がいました。
ポーランド代表のOHベドノシュです。
彼はついこの間まで中国リーグの上海でプレーしていましたが、中国リーグが1月上旬に終了したため、今回シーズン途中の大型補強選手としてザクサに合流。
この日が合流して初めての試合の日だったのです。
ただまだ合流して一週間も経っていなかったので、結果としてスタメンどころか途中出場の機会もありませんでした。
ニサのスターティングメンバーはいつもの7人で、宮浦はベンチスタートでした。
実はニサとザクサは同じオポルスキエ県内のチームで、つまりこの日はオポルスキエダービーという伝統の一戦。
そのためニサからも多くのファンが会場に詰め掛けて応援を送っていて、試合開始が近づいていくにつれてそのドラムの音もホームのザクサ応援団を凌ぐくらい激しく鳴り響いていました。
ちょっとうるさいくらいに(笑)。
そんなこんなで試合がスタート。
出だしはめずらしくザクサにミスが続いてニサが優勢!
ゲルジョットも相変わらずバカ高い打点で、相手のブロック上から奥のクロスコースにスパイクを決めてくれます。
中盤までニサは相手にブレイクを取られて同点には並ばれるも、なんとかそこでサイドアウトを切ってなんども逆転を阻止できていたので「今日はいけるそう」と勝手に思っていました。
しかしやっぱりそんなに甘くはなかったですね。
Sヤヌシュのサーブで揺さぶられ、さらにゲルジョットのスパイクがことごとく相手のブロックに引っかかって決まらなくなり、気づけば3点ビハインドに。
それからニサベンチを見ているとプリンスキ監督から宮浦へ準備の声がかかり、宮浦がアップを始めます。
そして21-22と1点ビハインドの場面でリリーフサーバー宮浦登場。
ここで決めたら同点と言う場面、この男はやってくれました!
サービスエーーーーース!!!
ザクサ戦でのミヤケンのサービスエースの場面。点数を決めた後にファンを煽るミヤケン。#宮浦健人 pic.twitter.com/xjkkUfItHI
— トシキ TOSHIKI (@toshikit71) January 20, 2023
さらにエースを決めた後にニサのサポーターの方に向かって大きく両手を振って応援をさらに煽っていて、微笑ましさとともに、なんだかすっかりこっちの、海外のプレーヤーになったんだなと思って胸がアツくなりました。
ただ宮浦がエースをとったとき恒例のゲルジョットによる持ち上げイベントが起きなかったのはちょっと残念でした(笑)。
タイミングを逃してしまったと思いますが、きっとゲルジョットも少し寂しかったことでしょう(笑)。
しかし続くサーブはネットにかかってしまい、そのままこのセットはザクサの手に。
第2セットは1セット序盤に決定率が落ちたゲルジョットの代わりに対角のクファソフスキが調子を上げていきますが、サーブやアタックのミスが出てここぞというとき点が取れず。
メンバーも半分以上変えますけど、このセットもそのままザクサ。
ぐぬぬ、渋い展開。
でも年末のベウハトフとの試合はこの0-2からほぼ控えメンバーで戦って逆転したからワンチャンいけるんじゃないか?!
まだ希望はある!!!
個人的には第3セットは、サーブで崩されてたゲルジョットを下げてベウハトフ戦と同様にエルグラオウイとブシェクのOH対角で行くのかと思ったら、ゲルジョットとエルグラオウイのスタートでした。
あとなぜかそれまでほとんど出場機会のなかった4番手ミドルのクラムチィンスキをスタート起用(あとから聞きましたが宮浦もこの起用には驚いたそうです)。
ちょっと心配。
でも序盤はそのクラムチィンスキのサービスエースや、ここぞの場面でのOPベンタラの活躍でリードできてました.
しかしそこからOHシリフカが無慈悲な4連続サービスエース…。
これでザクサが逆転。
会場のザクサファンは大盛り上がり。
その後、途中で入った職人ブシェクのサービスエースなどで再度リードしますが、すぐさまザクサにもサービスエースが続けて出て、そのまま19-24でザクサがマッチポイント。
しかしまずはニサのベンタラがスパイクで1本切って20-24とすると、ニサのサーバーはベンタラ。
この男なら何かやってくれるかもしれない…。
奇跡を起こしてくれベンタラ!!!!
ザクサファンのブーイングはこの日最高潮。
でこれがサービスエースに!!!!!
ザクサたまらずタイムアウト。
さあ次も続くかベンタラ。
ザクサファンのブーイングはさらに勢いを増しています。
しかしニサファンの応援も更に力強く会場に響いていました。
伝説を作れるかベンタラ…。
残念ながら反撃はここまででした。
結果0-3のストレート負け。
やっぱりサーブレシーブ、特にショートサーブの処理はニサの永遠の課題かなと感じました。
しかしそれ以上に、相手以上にサーブで殴ることができずニサらしさを出せなかったのが大きな敗因だったでしょう。
サーブミスがザクサが7だったのに対してニサは17で、各セット5, 6本のサーブミスは流石に多すぎますね。
その分エースやブレイクが取れているかというとそうでもないですし。
ニサはサーブで殴り勝つチームなので、次はしっかりとここを修正してなんとか勝ってほしい。
でも、負けはしましたが、試合後にファンの応援に感謝する選手たちと選手たちにねぎらいを送るファンとの温かい交流はいつ見てもいいものです。
このあと宮浦選手に取材をしました。
コメント内容はこちらの記事に掲載しています。
出場機会が限られている中でも宮浦選手はいつでも前を向いています。
そんな彼だからこそなんとか出場機会を掴んでほしい。
来シーズンへのアピールのためにもなんとか出場機会を掴んで活躍してほしい。
とりあえず次こそは試合で宮浦スパイクを拝みたいですね!!!
ベンタラが強いのはわかっているけど、プリンスキ監督、そこんとこ頼みます!!!
それから僕はファンの方の車に同乗させてもらってニサまで移動しました。
道中いろんな話をすることができましたが、その中でも面白かったのがクレクの話。
現在WD名古屋でキャプテンもつとめているクレクですが、彼はニサの近郊出身で、プロキャリアをスタートさせたクラブがニサでした。
それで去年も日本に行く直前までニサでクラブの選手たちと一緒に練習していました。
また「キャリアの最後はニサで終えたい」という発言を度々しているそうなので、もう30代半ばですから、名古屋のあとはニサに移籍するかもしれませんね。
あと若いころは今よりも寡黙だったとか、ニサでは彼のお父さんもチームメイトだったとかいろんな話を聞くことができました。
途中同乗していたひとりが酔っ払って何を話しているかわからなくなっちゃいましたが(笑)
でもこうしたファンの方々との交流もやはり現地観戦の醍醐味ですね。
皆さんも是非現地に行かれた際には地元ファンに勇気をもって話しかけてみてはいかがでしょうか?
写真:筆者撮影