コラム

東京五輪延期で得したチーム、損したチーム

2020年8月10日

本来の日程ならば、この週末にインドアバレーボール競技は男女とも決勝戦が行われ、優勝チームの歓喜の姿を目に焼き付けていたことだろう。しかし、ご存知の通り新型コロナウィルス・パンデミックにより、東京五輪は日程そのままに1年間延期されるという異例の事態となった。ただ、今回の延期にやや救われたチームというのもあるのではないかと思う。そこで今回は、来年の開催を前提とし、五輪延期で得したチーム、損したチームを僕の独断と偏見をもって分けていきたいと思う。

東京五輪出場チーム

とりあえず東京五輪に出場を決めているチーム(男子)とその組み分けをおさらいする。
※()は世界ランキング

A組:日本(10)、ポーランド(3)、イタリア(4)、カナダ(7)、イラン(8)、ベネズエラ(36)

B組:ブラジル(1)、アメリカ(2)、ロシア(5)、アルゼンチン(6)、フランス(9)、チュニジア(22)

 

得したチーム

日本

Photo by FIVB

開催国日本は得をしたんじゃないかと思う。昨年のワールドカップではいい成績を残すことができたとはいえまだまだ課題が多いのも事実。特にアウトサイドの選手層の薄さ、控えのオポジットが個人的には気になっていた。しかし、アウトサイドはここにきて若手が台頭してきている。特に先日行われた紅白戦で素晴らしい活躍を見せた日体大1年生の高橋藍には期待したい。キレのあるスパイクはもちろんだが、レシーブも安定しており、この1年の伸び次第では石川の対角も十分狙えると思う。高橋藍とは一度話したこともあって、人柄もとても良い印象を受けたので個人的にも応援している。また早大2年の大塚にも期待したい。彼らが成長できる1年ができたことは、日本チームにとても有利に働くのではないかと思う。またオポジットに関していえば、怪我明けの清水の調整期間が増えたことは大きいだろう。2018年の大けがから昨年復帰したが、まだ完全復活には時間がかかるだろう。この1年でなんとかコンディションを上げて、来年万全の状態に持ってきてほしい。西田の控えに大竹はやはり役者不足。清水のカムバックが望まれる。

 

カナダ

Photo by FIVB

カナダもやはり怪我人を抱えていた。セッターのTJサンダースだ。彼は幼少期の怪我の影響による腰痛にここ数年特に苦しめられており、2018年以降まともに選手生活を送ることができていない。今年のオリンピック大陸予選ではなんとか試合に出場し、見事五輪の切符を獲得したが、本調子ではなかったことは明らかであった。おそらく今年もクラブでプレーできないだろう。しかし、2016年のリオ五輪ベスト8や、2017年のワールドリーグ3位など、近年のカナダ代表の好成績を支えていたのは間違いなく彼である。なんとかこの猶予を存分に使って完全復活してもらいたい。

イラン

Photo by FIVB

こちらもオポジットのガフールが怪我をしていた。昨シーズンはセリエAの強豪ルーベに所属し活躍を期待されていたが、ほとんど試合に出ることなくシーズンを終えてしまった。(その代わりにルクセンブルク人オポジットのリフリツキが成長を遂げた。)今年のオリンピック大陸予選で、イラン代表は東京五輪出場を決めたが、韓国にフルセットまでもつれるなど精彩を欠いていた。やはり強いイランにはガフールが必要だ。さらに言えば、ヤリやエスファンディアルなどの世界ジュニア優勝メンバーの成長も期待できる。

 

アメリカ

Photo by FIVB

こちらも大黒柱のアウトサイドヒッター、テイラー・サンダーを怪我で欠いていた。アメリカは金メダル候補のチームであり、金メダルには攻守の要であるサンダーの復活は欠かせないだろう。昨シーズンはそのケガのためクラブチームでプレーすることはできなかったが、今シーズンはポーランドの強豪スクラ・ベウハトフに移籍。東京五輪で再びアンダーソン、ラッセル、サンダーの1,2,3連番サイドが並び立つことを楽しみにしている。

 

ロシア

Photo by CEV

ロシアは怪我人ではなく帰化選手の問題。イタリア、ブラジル、ポーランドとキューバ人帰化選手が各国代表で一世を風靡している流れに乗り、現在サンクトペテルブルクでプレーするキューバ人のカメホが2018年にロシア国籍を取得。今年からロシア代表としてプレーできる予定であったが、さすがにオリンピックイヤーからチームに合流してプレーするのは難しいだろう。ロシア代表とカメホにとっては貴重な1年になるに違いない。

フランス

Photo by FIVB

フランスもやはりリネールが怪我をしていたので、延期して得をしただろう。これに加え、というか最大の問題だったのは、ヌガぺトとボワイエの内紛問題でボワイエがチームを抜けていたことだ。東京五輪大陸予選では、オポジットはパトリーが一人で踏ん張りなとか勝つことができた。しかし彼もまだ絶対安定というわけではないので控えの選手が必要なのであるが、そこから半年ちょっとで新しいオポジットをチームに馴染ませるは難しかっただろう。その猶予を得たという意味でも、開催延長はフランスにとってはプラスに働くのではないかと思う。ただこれにより、自国開催の2024年パリ五輪へのチーム作りが遅れてしまうのが懸念されはするが。

 

損したチーム

ポーランド、イタリア、ブラジル、アルゼンチン

Photo by FIVB

これらのチームは開催延長で損をしたというよりは、自分たちはほぼ万全だったがライバルが回復する時間を得てしまい、相対的に損をしたといった方がいいだろう。ただポーランドのレオンやブラジルのレアルなど帰化して昨年からチームに合流した選手のいるところにとっては悪くはなかったかもしれない。しかしイタリアに関して言うと、主力のユアントレーナがやや心配。余計なお世話かもしれないが、1985年生まれの彼にとっては来年は36歳になる年だ。昨シーズンも年齢を感じさせないほどの圧巻のパフォーマンスを披露しているが、この1年がどう響くだろうか。アルゼンチンについては、あんまり言うこと無い(笑)。

 

わからない

チュニジア、ベネズエラ

この2チームについてはあまり詳しくないのでわかりません。ただどんなに状態が良かろうと、この2チームがグループ戦を突破できるのは日本チーム以上に厳しいことは間違いないだろう。

 

まとめ

こうして見てみると、開催延期により恩恵を受けるチームの方が意外に多い。つまり今年開催していたよりも、来年開催してくれる方がよりハイレベルな大会が見れそうだ。しかし、常に万全の状態のようなときは勝て、何か欠けてそうなときには負けるとは限らない。実際2016年のリオ五輪では、それまでチームを引っ張て来たムーリオを怪我で欠いていたブラジル代表が優勝している。何が起こるかわからない。だからこそやはりスポーツは面白いのだろう。

 

 

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