コラム

データから見るパリ五輪で男子日本に足りなかったもの

パリ五輪では準々決勝でフルセットの末に惜しくも敗れた日本。

本記事ではベスト4に進んだフランス、ポーランド、アメリカ、イタリアの4カ国とのデータを比較して、日本に何が足りなかったのかについて項目別に見ていきたいと思います。

なおデータはパリ五輪の公式レポート(https://olympics.com/ja/paris-2024/reports/volleyball/men)を参照しています。

※ポーランドとイタリアのデータについては力量差を鑑みエジプト戦のデータを除外して算出
※15点制の5セット目は0.6セット分とカウント

試合数セット数主なスタメン平均身長
(リベロ除く)
フランス622.8201.00cm
ポーランド520.2202.00cm
アメリカ623.2201.50cm
イタリア518.6203.33cm
日本417.2190.83cm
各国の参照する試合数、セット数、平均身長

アタック

日本のセットあたりのアタック得点はトップ4チームと比べるとやや多いです。日本は後述するブロック得点が他国と比べて少ないので、その分アタックで得点を取らなければいけなかったことが影響しているでしょう。

アタック効果率((得点-失点)/打数)については突出して高いアメリカを除いて、トップ4と比べてもそれほど大きな差はなかったですが、それでもやや低い数字です。

アタック得点セットあたりアタック効果率
フランス30213.2533.90%
ポーランド25412.5731.64%
アメリカ32914.1842.23%
イタリア24112.9635.65%
日本23913.9031.33%
アタック得点と効果率

また得点が多いのに効果率の差がないということはアタック失点も比較的多かったということになります。特に日本は被ブロックによるアタック失点が目立ったので、この点は改善されるべきでしょう。

アタック失点セットあたり
フランス924.04
ポーランド803.97
アメリカ713.06
イタリア563.01
日本834.83
アタック失点

各ポジションの1セットあたりのアタック得点を見てみると、日本はトップ4と大きな差は見られません。しかしフランス、アメリカ、イタリアはセッターもアタックでよく得点しているのがわかります。

OHOPMBセッター
フランス6.93
(52.32%)
3.73
(28.15%)
2.41
(18.21%)
0.58
(1.32%)
ポーランド5.79
(46.06%)
3.07
(24.41%)
3.71
(29.53%)
0
(0%)
アメリカ6.94
(48.94%)
3.45
(24.32%)
3.45
(24.32%)
1.15
(3.11%)
イタリア6.18
(47.72%)
4.03
(31.12%)
2.37
(18.26%)
1.13
(3.47%)
日本6.98
(50.21%)
4.24
(30.54%)
2.67
(19.25%)
0
(0%)
各ポジションのセットあたりのアタック得点と比率

ブロック

フランスはセットあたりのブロック本数が12チーム中最多で、ブロック力の高さが優勝の大きな要因となりました。フランス以外にセットあたりのブロックが2本を超えていたのはアメリカ、イタリア、あと表にはないですがドイツ(2.02本)のみでした。

これらと比べると日本はセット平均1本を下回っており、優勝したフランスと比べると約3分の1です。いくら身長が低いとしても、やはりブロックについてはまだまだ改善の余地がありそうです。

ただブロックタッチの本数については他と謙遜ない数字になっています。

ブロック本数セットあたりタッチ本数セットあたり
フランス652.851295.66
ポーランド341.491236.09
アメリカ482.111576.77
イタリア532.321276.83
日本210.921076.22
ブロック決定本数とブロックタッチ本数

サーブ

1セットあたりのサービスエース数は、ひとつ頭が抜けているポーランドを除けば日本は他のトップ4と互角の数字でした。しかし先ほど見たように日本はブロック本数が少なくその分をサービスエースで補う必要があるので、その点ではパリ五輪のエース数は足りなかったように思います。

エースセットあたり
フランス331.45
ポーランド412.03
アメリカ321.38
イタリア251.34
日本241.40
サービスエース数

1セットあたりのブロック本数とサービスエース数の合計値トップ4が、そのまま今大会のトップ4となっており、その数値が一番高かったフランスが優勝したのは偶然ではないでしょう。

セットあたりのブロックとエース
フランス4.30
ポーランド3.52
アメリカ3.48
イタリア3.67
日本2.32
セットあたりのブロックとエース数

また参考までに1セットあたりのサーブミス数を算出してみましたが、日本はトップ4と比べると少ない方であり、サーブミスの数がそれほど勝敗を左右するわけではないことがわかります。

ミスセットあたり
フランス893.90
ポーランド934.60
アメリカ1004.31
イタリア975.22
日本673.90
サーブミス数

サーブレシーブ

日本のサーブレシーブ成功率はトップ4と比べても悪くない数字で、失点についてはトップ4よりも良い数値でした。

しかしサーブレシーブ成功率がかなり低かったイタリアがトップ4に入っていることからわかるように、サーブレシーブ成功率よりもその後のアタックを決めてサイドアウトを取れるかどうかが勝利にはより重要です。

SR成功率1セットあたりの失点
フランス56.50%1.05
ポーランド50.51%1.19
アメリカ54.43%0.91
イタリア43.82%0.99
日本52.10%0.78
サーブレシーブ成功率と失点

日本の場合は相手にブロックを2枚以上揃えられてしまうと他国よりも得点が難しくなってしまうので、サーブレシーブでは他国以上に攻撃の選択肢を減らさないようにできるかが鍵でしょう。

ディグ

日本のディグのレベルはやはり世界トップでした。

セットあたりのディグ本数はトップ4よりも多く、かつそのうち失点とならずにプレーが続いた確率もトップ4よりも高い数字でした。この点は引き続き日本の強みとして継続していきたいところです。

ディグ本数セットあたり非失点率
フランス36516.0168.22%
ポーランド33216.4465.06%
アメリカ38016.3868.16%
イタリア32217.3165.53%
日本31518.3171.43%
ディグ本数と非失点率

チームエラー

パリ五輪の公式記録には「チームエラー」という項目があり、例えばレシーブが直接相手のコートに返ってダイレクトのスパイクを決められて失点した場合など他の項目に含みにくいエラーが「チームエラー」としてカウントされていました。

日本はトップ4と比べてこの数字がとても悪く、アタック失点と並んで日本のパフォーマンスを下げた大きな要因となったと思います。

チームエラー数セットあたり
フランス411.80
ポーランド412.03
アメリカ532.28
イタリア331.77
日本583.37
チームエラー数

今大会は日本らしくないミスがいつもより多かったという印象がありましたが、それがこうして数字にも表れていました。

ポジション別得点

最後に各ポジションのセットあたり得点を比較します。今大会の日本はトップ4と比べるとオポジットの得点が多く、ミドルとセッターの得点が低かったです。

OHOPMBセッター
フランス8.294.473.820.96
ポーランド7.133.615.250.30
アメリカ7.973.845.260.56
イタリア7.424.624.250.86
日本7.735.173.550.06
ポジション別得点(セットあたり)

オポジットの得点が多くなったことに関しては、不調のアウトサイドヒッターに比べて西田選手が初戦からスパイクとサーブで多くの得点を挙げていたことが要因でしょう。

一方ミドルとセッターの得点が少ないのは今大会に限った傾向ではないでしょう。

ミドルの得点はアタック得点を比較した時にはそれほど大きな差はなかったので、ブロックとサーブの得点による差が出ています。特にポーランドとアメリカのミドルはブロックだけでなくサーブエースも多かったので、上記のような高い得点になっています。

またセッターに関しても、トップ4チームのセッターはブロックとサーブで多くの得点を挙げています。優勝したフランスチームでサービスエース数が一番多かったのはセッターのブリザールでした。

まとめ

以上のことからスタッツから見てパリ五輪のトップ4チームと比較して足りなかったのは大きく以下の3点でした。

  • アタック効果率(特にアタック失点の多さ)
  • ブロック得点とサービスエース
  • チームエラー

しかし足りなかったと言っても本当に僅かな差だったので、日本もトップチームのひとつであるは間違いないです。

ただトップレベルの試合は常にその僅かな差が勝敗を分ける差となる厳しい世界なのです。

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8月31日(土)午後5時 女子#3
9月 7日(土)午後5時 男子#4
9月14日(土)午後5時 女子#4

(TBSテレビリリースより引用)

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写真:Volleyball World

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