イタリア男子バレーボールリーグセリエA後半第8節、髙橋藍所属のパドヴァ(10位)は現地時間2月12日(日)にホームでヴェローナ(5位)と対戦し、2-3(21-25, 22-25, 25-20, 29-27, 17-19)で敗れました。
髙橋はスタメンで出場し、チーム2位の18得点の活躍でした。
第1セットスタメン
パドヴァ
OH:髙橋(日本)、アスパルホフ(ブルガリア)
MB:ヴォルパト(イタリア)、クロサート(イタリア)
OP:ペトコヴィッチ(セルビア)
S:サイッタ(イタリア)
L:ツェンガー(ドイツ)
ヴェローナ
OH:マガリーニ(イタリア)、モジッチ(スロベニア)
MB:コルテシア(イタリア)、グロズダノフ(ブルガリア)
OP:ケイタ(マリ)
S:スピリト(イタリア)
L:ガッギーニ(イタリア)
※ポジション:OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OP=オポジット、S=セッター、L=リベロ
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試合レポート
ヴェローナは本来OHのケイタをOPとして起用します。
第1セット、1本目からOH髙橋のスパイクがOHモジッチのブロックに阻まれてヴェローナに先制点を許しますが、すぐにOH髙橋がスパイクで得点すると続く自身のサーブでエース1本を含む3連続ブレイクを奪い、パドヴァが5-2とリードします。
ヴェローナもOHモジッチのスパイクやOPケイタのスパイクやブロックで11-11同点に追いつきますが、パドヴァはOPペトコヴィッチとOH髙橋に再びサービスエースが出るなどして17-15とリードを保ちます。
しかしヴェローナのSスピリトがサービスエースを決めて17-17とすると、そこから更にOHマガリーニが続けてスパイクを決めて17-19と逆転に成功します。
その後もOHケイタのスパイクやサーブで点差を広げると、最後はMBコルテシアのサービスエースが決まって21-25で第1セットをヴェローナが取ります。
第2セット、パドヴァはMBヴォルパトに代えてMBカネッラをスタートから起用します。
出だしからパドヴァがOPペトコヴィッチのエースとOH髙橋が相手のOPケイタをシャットするブロックで会場を沸かせますが、すぐさまヴェローナがOPケイタやOHマガリーニのスパイクで4-6と逆転します。
パドヴァはOHアスパルホフに代えてOHデスメット(ベルギー)を投入してサーブレシーブの安定化を図りますが、中盤にもヴェローナがOHモジッチのサービスエースやMBコルテシアのブロックなどで6連続得点を上げて12-18とパドヴァを一気に突き放します。
パドヴァはあらたにOPグッツォ(イタリア)、Sゾッペラーリ(イタリア)、OHガルディーニ(イタリア)をコートへ送りますが、ヴェローナがOHモジッチのスパイクなどでそのまま得点を重ねて16-24とセットポイントを握ります。
しかしパドヴァがOPグッツォのスパイクでサイドアウトを取ると、そのOPグッツォのブロックやOHガルディーニのスパイク、Sゾッペラーリのサービスエースなど新しく入った選手たちが次々と得点を決めて22-24と5連続ブレイクに成功。
ただし最後はOPケイタがスパイクを決めて切って22-25でこのセットもヴェローナが取ります。
第3セット、あとがないパドヴァはOHを髙橋とガルディーニ、MBをカネッラとヴォルパト、OPをグッツォにして挑みます。
すると序盤からOHガルディーニがスパイクとサーブで続けて得点を決めて4-2とパドヴァがリードします。
その後もパドヴァはOHガルディーニとOPグッツォを中心に得点を重ねていきますが、点差は開かないまま12-12と中盤に入ります。
そこで再びOHガルディーニがサービスエース、更にOH髙橋のスパイクも決まってパドヴァが15-12とすると、そこからはSサイッタがミドルなども絡めてうまくサイドアウトを切っていき21-18とパドヴァがリードを保ちます。
セット終盤はヴェローナのストイチェフ監督にレッドカードが出るなどしてパドヴァが3連続ブレイクで24-18と先にセットポイントを奪うと、最後はOHモジッチのサーブがミスとなって25-20でこのセットをパドヴァが取り返します。
第4セット、序盤からOH髙橋がスパイク、さらに2本のブロックなどで会場を盛り上げて7-4とパドヴァがリードします。
その後もSサイッタのサービスエースなどサーブが走ったパドヴァが11-6と点差を広げますが、ヴェローナもOPケイタがOHガルディーニから2本連続でエースを奪うと、さらにMBコルテシアにもエースが出るなどして15-14と1点差となります。
しかし点数がほしいところでOH髙橋がしっかりと得点につなげて22-19とパドヴァがリードを保ったままセット終盤に入りますが、ケイタに代わって入ったOPサポシコフ(ロシア)がサービスエースを決めると、その後OHモジッチが連続してスパイクを決めて23-23とヴェローナが同点に追いつきます。
試合はそのままデュースに入り一進一退の攻防が続きますが、パドヴァがMBカネッラのクイックでサイドアウトを取った直後にOHモジッチのスパイクミスが出て29-27でこのセットを取ります。
第5セット、ヴェローナはOHにモジッチとケイタ、OPにサポシコフという今シーズンの基本フォーメーションで臨みます。
序盤パドヴァはOHガルディーニのスパイクやサーブなどで得点する一方、ヴェローナはOPサポシコフにボールを集めて高い打点から確実にサイドアウトを取っていき、5-5と両者譲りません。
そこからパドヴァが粘りのディフェンスからMBヴォルパトがクイックを決めて7-5と一歩抜け出しますが、コートチェンジ後にOHガルディーニにスパイクミスが続いて9-10とヴェローナが逆転します。
その後OHガルディーニが自らサービスエースを決めて11-10としてパドヴァがまた1歩前に出ますが、13-13の場面でOHモジッチが巧みなショートサーブでエースを取って13-14とヴェローナが先にマッチポイントを迎えます。
そのまま再びデュースに突入し、OHガルディーニがOHケイタをブロックして15-14とパドヴァがまたリードしますが、最後はそのOHケイタに2連続サービスエースを決められて17-19でこのセットを取り切ったヴェローナが2-3でパドヴァに勝利しました。
MVP:Sルカ・スピリト(3得点(うちサーブ1、ブロック1)
髙橋藍はチーム2位の18得点(うちサーブ2、ブロック3)、アタック決定率45%、サーブレシーブ成功率61%の活躍でした。
この結果パドヴァは6勝13敗16ポイントで10位維持。
次は現地時間2月19日(日)18:00(日本時間翌2:00)からアウェイでモンツァと対戦します。
試合の感想など
この試合は現地で見ていましたがとっても悔しい敗戦となってしまいました。
ただ正直2セット目途中までの試合展開を考えるとフルセットまで行って勝ち点を1ポイントだけでも取るとこができたことは非常に大きいと思います。
この日のヴェローナは正OPのサポシコフがコンディションが万全ではないため、この試合はOPにケイタ、そしてOHにマガリーニを入れてのスタートでした。
OHマガリーニでは守備力が安定する分攻撃力が落ちるので、ストレートでボロボロに負けた前半戦よりは善戦できるのではと試合前は思っていたのですが、蓋を開けてみるとまたしても厳しい試合に…。
リーグ前半のヴェローナホームでの試合では、パドヴァがヴェローナのサーブにだいぶやられていた印象でしたが、今回は相手のブロックに苦しみました。
1セット目はヴェローナの直接的なブロックポイントこそ少なかったものの、パドヴァのスパイク決定率が25%という男子バレーではあまり見られないほどの低い数字に抑えられ、特にOPペトコヴィッチとOH髙橋が決定率10%代にまで抑えられていました。
ただパドヴァは上記2人のサーブが走ったので第1セットは21点まで乗せることができましたが、試合を見る限りは両者には点差以上の差がありました。
2セット目はOPペトコヴィッチのスパイクが改善されましたが、逆にOH髙橋のサーブでブレイクが取れなくなり、終盤までは1セット目以上に点差が広がってしまいました。
そうしてパドヴァはスタメンを半分以上入れ替え、「今日も0-3かな、やっぱりサポシコフがいないとは言えヴェローナには勝てんのか」と思っていたら、ヴェローナがセットポイントをとってからその代わった選手たちが躍動!
OPグッツォ、OHガルディーニ、Sゾッペラーリがそれぞれ点数を決めて5連続ブレイクに成功して会場のパドヴァファンを沸かせます。
試合中はあまり笑顔を見せない髙橋も、このときばかりはベンチで笑っていました。
結果的にはこのセットもヴェローナが取りましたが、3セット目に向けて控えメンバーが非常にいい流れをパドヴァに持ってきてくれました。
第3セットはOHガルディーニとOPグッツォをスタメンに。
試合経験の少ないガルディーニと髙橋の対角ならなおさら髙橋をセッターに近くて真ん中でサーブレシーブをすることが多く2番ポジションにすれば?と思いましたが、相変わらず髙橋は5番です(この髙橋の使い方には相変わらずの強いこだわりを見せるクッティーニ監督)。
でもそのOHガルディーニが序盤からスパイクにサーブに大活躍!
失礼ながらOHガルディーニのスパイクは他の選手のものと比べると軽そうに見えますが、なぜかバンバン決まっていきます。
ただ彼はストレート方向のティップ(指先で押し込むフェイント)が上手く、相手のブロックも利用しながらバンバン決めてましたね。
またガルディーニは身長もあってブロックも高いので、相手のスパイクに対してブロックタッチをよく取れていて、そうした守備面での貢献も高かったです。
これまでの試合には元イタリア代表の彼の父親が毎試合会場にいましたが、今月からポーランドのクラブの監督に就任したためこの日は会場におらず。
この日の活躍こそ見たかっただろうに…。
そんなガルディーニの活躍に刺激されてか、2セット目まで10%代だった髙橋のスパイク決定率も50%代にまで改善されていよいよ本領発揮!
またパドヴァはSサイッタがミドルも効果的に使っていきます。
逆にヴェローナはOPに入っていたケイタのスパイクが決まらなくなりこのセットは決定ゼロ。
正にパドヴァがこのセットから流れを掴んで1セット奪い返します。
さあさあ面白くなってきましたよ!!
そして第4セットはもう髙橋藍祭り。
開始早々に難しいハイボールをクロスに叩き込むと、珍しく相手のOHマガリーニとOPケイタを続けてブロックでシャットアウト!!
特にケイタとは身長差約20cm、最高到達点を考えるともっと差があると思うので、そのケイタを髙橋が止めたときにはベンチメンバーも総出で喜びを爆発させてました(笑)。
第3セット決定率75%と神ががっていたOHガルディーニは決定率が落ち、OPグッツォもふくらはぎを抑えていて後衛3ローテだけOPペトコヴィッチと交代。
ただそのペトコヴィッチのスパイクも決まらず中盤苦しい展開のパドヴァ。
しかしそんな中でも髙橋が決めまくる!
そして神の片手ディグも見せて拾いまくる!!
髙橋はこのセットなんとスパイク決定率100%!!!(かっこよすぎやしませんか?)
終盤いよいよヴェローナはOPサポシコフ(220cm)を投入してきましたが、なんとかこのセットもパドヴァが取って試合はファイナルセットへ。
最終セットはもう本当に緊張感がバチバチに伝わってくる試合でした。
ヴェローナは前半戦でパドヴァをボコボコにした超攻撃型サイド3人体制に戻してきました。
その中でも活躍が目立ったのがパドヴァのOHガルディーニ。
スパイクにサーブに得点を決めてチームをけん引してくれます。
一方のヴェローナはOPサポシコフにサイドアウトをほぼ全振りでしたが、それをほぼ全部決めてくる。
Sスピリトもサポシコフ用に高く丁寧なセットを供給し続けていました。
先に8点、さらに13点を取ったのはパドヴァでしたが、13-13の場面でモジッチのショートサーブがLツェンガーの前に落ちて13-14とヴェローナが先にマッチポイントを掴みます。
ツェンガーはサーブレシーブでOHガルディーニの範囲までかなりカバーしていてこれまでよく耐えててくれていましたが、この場面は上げてほしかった。
その後またラッキーボーイのOHガルディーニがブロックポイントを上げて逆転に成功しますが、最後はOHケイタのバズーカサーブでガルディーニ、ツェンガーと続けてやられてゲームセットでした。
特にマッチポイントを決めたケイタのサーブは2人の間でややガルディーニよりの場所に来たので、ツェンガーの反応が遅れてしまってのサービスエースでした。
ああなるともうあそこにあれだけ強烈なサーブを打ち込めたケイタを称えるしかありません。
勝てた試合だったことは間違いありませんが、本当に2セット目途中の絶望的な状況から考えると見事なカムバックでしたし、勝ち点を1ポイントだけでも取れたことは降格回避に向けたとても大きなポイントだったと思います。
髙橋自身も、2セット目まではスパイク決定率13%とかなり低迷していましたが、3セット目以降は78%と驚異的な復活を見せてくれました。
欲を言えば第5セットが0得点(打数も0)だったのでもっと攻撃に絡んでいければよかったですが、それでも見事な修正能力の高さをこの試合でもいかんなく発揮してくれましたね。
この21歳は本当に末恐ろしいです…。
またガルディーニもすごかった。
そのままパドヴァが勝っていたら彼がMVPを取っていたでしょう。
チーム最多20得点(うちサーブ4、ブロック2)、アタック決定率48%の堂々たる数字。
やっぱりサーブレシーブに不安がありますが(サーブレシーブ失点7)、そこは今後出場機会を更に積んでいくことで改善されてくると思うので、そうなってくるとアスパルホフ以上のポテンシャルを秘めた選手なのかもしれませんね。
あとアスパルホフは一度スパイクやサーブレシーブでダメになっちゃうと戻ってこれない感じですが、その点ガルディーニは気持ちを切り替えられる選手なんじゃないかとこの試合を見て感じました。
もう少しこの2人の対角も見てみたいなと思わせてくれますね!
もちろん髙橋が2番で(笑)。
さてこれでリーグ戦は残り3試合。
相手はモンツァ、トレント、そしてピアツェンツァ。
順位的にもパドヴァが勝てるとしたら次のモンツァ戦しかないかなと思うので、なんとか来週勝っておきたいですね。
フォルツァ!!!(がんばれ)
写真:PallavoloPadova