試合レポート

龍神NIPPON、アメリカに2-3で敗れ2位で大会を終える

2023年10月9日

パリ五輪予選/ワールドカップバレー2023男子大会最終日、日本代表はアメリカと対戦し2-3(19-25, 25-22, 25-19, 23-25, 12-15)で敗れました。

第1セットスタメン

日本

OH:大塚、富田
MB:山内、エバデダン
OP:宮浦
S:山本龍
L:小川

アメリカ

OH:ジャスキー、ムアグトゥッティア
MB:エヴリル、スミス
OP:アンダーソン
S:クリステンソン
L:ショージ

※ポジション:OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OP=オポジット、S=セッター、L=リベロ

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試合レポート

第1セット、序盤は日本はMBエバデダンのブロックやOP宮浦のアタックで8-6と日本が先行します。しかしOPアンダーソンのサーブから2連続ブレイクを決めてアメリカが10-11と逆転すると、さらに日本にミスが重なり12-16と点差を離されます。終盤にもMBエヴリルのサービスエースやOPアンダーソンのスパイクでアメリカ17-23とすると、最後はMBスミスのクイックが決まり19-25でこのセットをアメリカが取ります。

第2セット、アメリカはSマアとOPエンシン、Lダゴスティーノをスタートから起用します。序盤はアメリカがOHムアグトゥッティアのスパイクやブロックで5-8とリードします。しかし日本もL小川らのディグからのOP宮浦、OH大塚、OH富田のスパイクでジワジワとブレイクを重ねて15-14と逆転に成功します。更にOP宮浦のサービスエースや2枚替えでオポジットとして入った石川の連続スパイクで21-18と点差を広げます。終盤MBエヴリルのブロックにOP宮浦がつかまり23-22と1点差に詰め寄られますが、途中出場のOH髙橋藍の完璧なサーブレシーブからOH大塚がスパイクを決めてセットポイントを握ると、最後はOH大塚のサービスエースが決まり25-22でこのセットを日本が取ります。

第3セット、日本はOH富田、アメリカはOHジェスキーを中心に序盤は得点を重ねて9-9と進みます。そこからOH大塚のアタックや相手のミスで15-11と日本が抜け出します。さらにOH大塚の活躍で19-13と点差を広げますが、その後日本にミスが重なって21-18とやや点差が縮みます。しかしOP宮浦の際どいコースを突いた鋭いサービスエースが決まり23-18とすると、途中出場のOH髙橋藍のセットからOH富田が決めて24-19、そして最後はMB山内がブロックを決めて25-19でこのセットも日本が取ります。

第4セット、アメリカはこのセットからスタメン起用のMBジェンドリックとMBスミスのスパイクやブロックで5-9と序盤から大きくリードを広げます。中盤に日本はOP宮浦のスパイクや2連続サービスエース、さらに途中出場のOH甲斐のスパイクなどでブレイクを重ねて20-17と逆転。しかしOHジェスキーのサーブから4連続ブレイクを決めてアメリカが20-22と再びリードを奪うと、その点差のまま最後はOHムアグトゥッティアのスパイクが決まり23-25でこのセットをアメリカが取り返します。

第5セット、アメリカがMBジェンドリックのスパイクとブロックで1-3としますが、日本もOP宮浦の連続スパイクなどで4-4とすぐに追いつきます。しかしMBジェンドリックのサーブからアメリカに連続ブロックが出るなどして5-9とアメリカが一気に走ります。日本はOP宮浦やOH甲斐のスパイクでなんとかブレイクを決めて12-13と1点差まで詰め寄りますが、最後はMBジェンドリックがスパイクを決めて12-15でこのセットをアメリカが取り、日本は2-3でアメリカに敗れました。

TOSHIKI’S MVP

日本:OP宮浦健人

27得点(うちサーブ4、ブロック1)、アタック効果率36.36%

両チーム最多得点。他の日本のアタッカーがなかなか得点を上げられなかった試合序盤からひとり得点を決め続けて最後までその左腕でチームを支えました。特にこの試合はセッター山本のセットが安定しない場面が少なくないなか状況に応じて軟硬を織り交ぜて巧みにアタックを決め続け、サーブでも際どいコースに鋭いサーブを放ちエースを量産してくれました。このようにスタメンレベルの実力を十分に発揮してくれたわけですが、一方悪い意味で宮浦頼みになってしまった場面も少なくなく、チーム全体の底上げの必要性を感じさせる試合ともなりました。

アメリカ:MBジェフリー・ジェンドリック

6得点(うちブロック2)、アタック効果率80%

試合の流れを変えたキーマン。第4セットからコートに立つと要所でクイックやブロックで得点をあげたほか、第5セットでは自らのサーブを起点に連続ブレイクをあげて流れをアメリカに手繰り寄せました。

感想など

本日も現地での観戦となりました!!

前日の結果でお互いにパリ五輪出場を決めたため、この日の試合は言わば消化試合でした。消化試合というの一般的にあまり面白いものにはならない傾向にあるのでチケットの値段以上のものが見られるのかどうか心配でしたが、蓋を開けてみたら僕の消化試合観戦史上もっとも面白いエンターテインメントでした!

まず何と言っても昨シーズンポーランドでプレーして誰よりも取材をさせてもらった宮浦が大活躍したこと。決めまくってました。このパリ五輪予選ではワンポイントの起用がほとんどで、プレータイムがあまり長くなかったので、最後に大暴れする彼の姿を日本で見ることができてとてもよかったです。やはりVNLではスタメンとして30年ぶりのブラジル撃破や46年ぶりの世界大会銅メダルに貢献しただけあって、他の控えのサイドアタッカー比べると実力の差を感じさせてくれました。

特に第5セット4点目のスパイクは痺れた。また得意のサーブでもコーナーやサイドラインギリギリにキレのあるエースを見せてくれました。「最低エース3本は見せてくれ!」と勝手に思っていた僕ですが、その声が届いたかオマケの1本を加えた4本のエースを決めてくれました。ホンマにスパイクにしろサーブにしろコースがエグい。

またこの日はセッターの山本龍のプレーがあまり安定せず、アンテナまで伸びなかったり低かったりするセットが少なくありませんでしたが、そうしたボールに対してもうまく合わせて得点にしたりリバウンドを取ったりしていて、その部分でも成長を感じました。

この試合はセッターの差が勝敗を分けた要因のひとつだったと感じました。やはりクリステンソンはもちろん控えのマアも所属するトルコのチームを欧州チャンピオンズリーグベスト4まで導くなど経験豊富な選手です。その差が大きかったように見えました。ただ山本も来季からルーマニアで経験積んで来年また成長して日本代表に帰ってきてくれることでしょう。

他に目立った選手といえばリベロの小川。サーブレシーブは安定していましたし、ディグもめっちゃ拾う。「うわ!…っおがわ!!」というシーンが何度もありました。また彼はセッター経験者でもあるので、打ちやすいハイセットきれいにあげる。本当にオポジットのポジションと同様に彼と山本智大との差もほとんどないと思うんですよね。あとは石川・藍とのプレー面での相性とかの問題なのでしょうか。

あと大塚もスパイク、サーブ、そしてレシーブで光る活躍を見せていました。ハイボールをうまく叩いて得点にしていて頼れる存在でした。ここは流石に洛南コンビが効いたのかな。ただもう少しブロックでの存在感が欲しかった。195cmとアウトサイドヒッターの中では甲斐の次に大きい選手なので今後はそこもひとつ武器になってくるといいな。

富田、ラリー、甲斐のプレーを見れたもの楽しかったです。アウトサイドヒッターの富田は守備で、甲斐は攻撃面で良さが見られましたが、特に富田は攻撃面でもっと向上が必要でしょう。頑張れ!スタートから甲斐というセットも見たかったな。ラリーも急なベンチ入りだったろうけどもっとやれるはずだから頑張れ!!山内も要所でブロックタッチを取れてたけども龍とのコンビがなんかうまく行ってなくてもったいなかった。

そしてサプライズだったのがベンチメンバーの起用。だいたい消化試合というのはスタメンメンバーを休ませるためにほとんどコートに立たせないことが多いんですけど、この試合では石川・関田が2枚替えで、藍がリリーフサーバーからのレシーバーとして起用されました。

なんと贅沢な!笑

特に石川がコートに入ると会場の盛り上がりはもちろんですが、なんだかコートが締まるというか、もういち段エネルギーが充填される感じがします。本人は慣れないオポジットポジションでサーブレシーブ時の位置をギリギリまで確認しながらやってて新鮮でしたが(笑)。またセッター関田も、鉄壁の藍もとても安心感がありましたね。本当に頼もしい。

控え選手を中心にしつつも勝ちに行くための起用だったと思いますが、ファンにとってもとても嬉しいサプライズだったのではないでしょうか!?僕はお祭りみたいで楽しかったです!(笑)

ただ試合は上述の通りフルセットで破れました。第5セット終盤のあと1点が遠かった。アメリカ代表も控える選手だったとはいえ、ほとんどはイタリアやポーランド、トルコといったトップレベルのリーグで経験を積んでいる猛者ばかりで経験値の差が出たように感じました。

消化試合とはいえ、やっぱり負け試合で終わるのはなんだか悔しい気持ちになりました。特に宮浦があれだけ得点をあげて活躍した試合だったので、彼の活躍に勝ち星がついてほしかったなと思います。

いくら個人が活躍してもチームで勝たないと意味がないのがチームスポーツ。チームを勝たせる選手になってこそ本物。石川は昨シーズンのイタリアでそうなって、そのまま日本代表も勝たせられる選手となりました。こういった選手がどんどん増えてくると日本はもっと強くなります。

とにかく改めてパリオリンピック出場が決まって本当によかったし、最後の2日間だけ会場に来て最高の試合を見ることができて本当によかったです!!また会場でお会いした皆さん、お声がけくださった皆さん、本当にありがとうございました!

今年の代表シーズンは、VNLでのブラジルからの30年ぶりの勝利に始まり、46年ぶりの世界大会メダル、完全にアウェイでのアジア選手権優勝、そしてパリ出場決定と重要な試合すべてを現地で見届けるという大変な幸運に恵まれました。自分にとっても本当に特別なシーズンとなりました。

僕も龍神NIPPONのみなさんに負けないように、人間としてもっと成長していきたいと思います!!!

おめでとう、そしてありがとう龍神NIPPON!!!!!

また来年!!!!!!

最終順位

1.アメリカ 7勝0敗 20ポイント ★
2.日本 5勝2敗 16ポイント ★

3.スロベニア 5勝2敗 15ポイント
4.トルコ 4勝3敗 11ポイント
5.セルビア 3勝4敗 9ポイント
6.フィンランド 2勝5敗 7ポイント
7.エジプト 2勝5敗 5ポイント
8.チュニジア 0勝7敗 1ポイント

★パリ五輪出場権獲得

Photo: FIVB

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