試合レポート

パドヴァ、髙橋藍が大車輪の活躍をみせるも強豪モデナに0-3で敗退

2022年12月22日

イタリア男子バレーボールリーグセリエA後半第1節、髙橋藍所属の10位パドヴァは現地時間12月18日(日)にアウェイで同2位のモデナと対戦し、0-3(23-25, 20-25, 23-25)で敗れました。

この試合、髙橋はスタメンで出場しチーム最多の17得点をあげるなど大活躍でしたが、チームを勝利に導くことはできませんでした。

第1セットスタメン

パドヴァ

OH:髙橋、デスメット(ベルギー)
MB:ヴォルパト(イタリア)、クロサート(イタリア)
OP:ペトコヴィッチ(セルビア)
S:サイッタ(イタリア)
L:ツェンガー(ドイツ)

モデナ

OH:エンガペ(フランス)、リナルディ(イタリア)
MB:サングイネッティ(イタリア)、スタンコヴィッチ(セルビア)
OP:ラグムジア(トルコ)
S:ブルーノ(ブラジル/ イタリア)
L:ゴッリーニ(イタリア)

※ポジション:OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OP=オポジット、S=セッター、L=リベロ

この試合のスタッツはこちら

試合レポート

第1セット、パドヴァが髙橋のキレのあるレフトスパイクで先制点をあげるも、OHデスメットのスパイクミスやOPペトコヴィッチがブロックに捕まるなどして2-5とモデナがリードします。

しかしパドヴァもMBクロサートのエースなどで5-5と追いつきそこから中盤までお互いサイドアウトを取り合う展開が続きますが、OHエンガペのサーブからOPラグムジアがスパイクを決めるなどして11-14とモデナが抜け出します。

その後もOPラグムジアが連続エースを決めるなどして14-19と更に点差を広げますが、17-21の場面でOH髙橋にサーブが回ってくると、モデナのOHリナルディの前に落とすショートサーブでエースを取り、その後も効果的なサーブを続けて打ち、カウンターで自らのバックアタックで得点するなどして20-21と1点差まで詰め寄ります。

更にパドヴァが粘りのラリーからMBヴォルパトのブロック、OHデスメットのスパイクで23-23と同点に追いつきます。

しかし直後にMBサングイネッティのクイックでモデナがセットポイントを握ると、続く彼のサーブがエースとなり23-25でモデナがこのセットを取ります。

第2セット、序盤からパドヴァはOH髙橋がキレのある動きで次々と得点を決めますが、モデナもOHエンガペを中心に得点を重ねて点差が開かないものの、13-15とモデナが僅かにリードして中盤に差し掛かります。

その後OJエンガペのブロックとOHリナルディのサービスエースでようやく連続ブレイクに成功したモデナが14-18と抜け出し、更にMBサングイネッティのクイックやOPラグムジアのOHデスメットを止めるブロックで18-23とモデナがリードを広げます。

最後はOPラグムジアのスパイクが決まって20-25でこのセットもモデナが取ります。

第3セット、後がないパドヴァはMBヴォルパトに代えてMBカネッラを、OHデスメットに代えてOHガルディーニをスタートからコートに送ります。

序盤はOPラグムジアのスパイクで点数を重ね、サーブでもブレイクに成功したモデナが5-7とリードします。

その後もMBサングイネッティやOPラグムジアのブロックなどで10-14とモデナがリードを広げます。

パドヴァもOH髙橋が高速パイプ攻撃を決めて12-15とすると、直後のOHガルディーニのコントロールサーブが機能し、サービスエース1本を含む3連続ブレイクで15-15と同点まで追いつきます。

しかしOPラグムジアのサービスエースやパドヴァの連続アタックミスで17-20と終盤再びモデナがリードします。

その後OH髙橋のナイスセットからのOPペトコヴィッチのスパイクが決まって20-21と再び1点差に詰め寄るもあと1点が出ないパドヴァ。

最後はOPラグムジアがしっかりとスパイクを決めて23-25でこのセットも取ったモデナが0-3でパドヴァに勝利し、前半戦のリベンジを果たしました。

MVP:MBジョヴァンニ・サングイネッティ(14得点(うちサーブ1、ブロック2)、アタック決定率85%)

髙橋はチーム最多の17得点(うちサーブ1)、アタック決定率62%(失点0)、サーブレシーブ成功率38%でした。

これでパドヴァは通算成績を4勝8敗9ポイントとして暫定10位。

次はクリスマス明けの現地時間12月26日(月)18:00(日本時間翌2:00)から、ホームで同5位のルーベ・チヴィタノーヴァと対戦します。

前半戦のレポートはこちら↓

感想など

この日は現地取材でした。

前日にチステルナで試合を見ていたので、その試合後にまずローマまで電車で移動し、それから夜行バスでモデナに向かいました。

ローマ・ティブルティーナ・バスターミナルは、いかにもバスを待ってなさそうな黒人系の人たちがたくさんいて治安悪げでした。

ローマ・ティブルティーナ・バスターミナル

モデナに着いたのは午前6時ごろ。

ここから徒歩10分の早朝チェックインを快諾してくれた心優しきオーナーの宿まで移動します。

バスから降りたときに先月のブラックフライデーで買った手袋を片方(左手)なくしていることに気づきショックをちょっと受けながらも宿に到着。

学生時代は夜行バスで爆睡し到着後も朝からガンガン活動できましたが、夜行バスではしっかり疲れを取ることができなくなってしまった僕は宿に着くや否やお布団に包まれて意識を飛ばしました…。

そして日中の大半を寝て過ごし、無事体力を回復した僕はいよいよモデナ・バレーの本拠地、パラ・パニーニに向かいます。

パラ・パニーニまでは宿から徒歩30分。

モデナ駅からも歩いて30分程度なのでイタリアの会場の中では比較的アクセスが容易な体育館ではないかと思います。

パラ・パニーニ正面

スポンサー企業のキャラクターであろうネズミ3兄弟がお出迎え

手は人間の手でした

人気のクラブチームということもあり、物販も充実していました。

写真が下手なのはご愛敬

アリーナの内部はこんな感じ。

パラ・パニーニの最大収容人数は約5000人とそもそも多いのに、この日の観客数は4207人とその8割以上を埋めるお客さんが会場に駆けつけていました。

しかもこの日はこの試合の直前までサッカー・ワールドカップの決勝戦が行われていたにも関わらずこれだけの人数が入るのは流石モデナという他ありません(でも会場にいる人の多く男性客がギリギリまで自分のスマホでサッカー見てました(笑))。

あと今日はクリスマスに合わせて「テディ・デイ」ということで、観客からぬいぐるみの寄付を募るイベントの日でもあったので、余計にお客さんが多かったのかもしれません(僕はこのことを事前に知らなかったのでかなりビックリしました(笑))。

以前モデナのバレーボールファンと話をしたときに「イタリアで一番人気のスポーツはサッカーだけど、モデナで一番人気なのはバレーボール」と語っていたことを思い出しました。

それだけバレーボールというスポーツはモデナ市民に愛されているんですね。

でもパドヴァの応援団「MEN IN BLACK」のみなさんも早くから会場入りし、モデナファンに負けじと存在感を放っていました。

またモデナの会場の角に、そのシーズンの外国人選手・スタッフの出身国の国旗が飾ってあります。

僕が初めてパラ・パニーニに行った約7年前は、石川がいたシーズンだったのでここに日本国旗がばっちり飾ってありました!(ただしそのときは石川がシーズン途中ですでに帰国したあとでした…)

またここに日本国旗が並ぶ日が来るのかどうかというのも今後楽しみです。

この前日に取材をしたチステルナ対ミラノは1-3でミラノが敗れました。

僕はこれまでイタリアで日本人選手が出ている試合を6試合見ましたが、すべて日本人選手がいるチームが負けるという疫病神的な側面を持ってしまっています。

このままでは選手に申し訳ないし、僕自身も気持ちよく取材活動ができないのでこの試合は何としてでも勝ってほしかったんです。

ただミラノはチステルナに対して前半戦でも負けていたのに対し、パドヴァホームで行われた今シーズンのパドヴァ対モデナの試合はフルセットの激戦の末、パドヴァが大金星をあげました。

確かにモデナはシーズン序盤と比べると確実に強くなっていますが、一度勝っているし、強豪だけど希望はある!!

会場のモデナファンのみなさんごめんよ!(笑)

そんな期待を胸に試合までスタンバイをしておりました。

この日の髙橋はリラックスしつつも真剣な表情で淡々とウォームアップをこなし、いつもどおりフェデ(・クロサート)と対人パスをし、いつもどおりスパイク、サーブを確認しながら打っていました。

そしていざ試合開始。

開始そうそう1点目を華麗に決めたのは我らが髙橋。

というかこの日の髙橋はキレキレというか、覚醒状態というか、ギアフィフスというか、とにかくヤバかったです!!!

サーブレシーブやつなぎのプレーがいいのはもちろん、ジャンプがいつも以上に高く感じましたし、アタックも打てば決まるし失点がない!

26本も打ってアタック決定率62%で失点なしですよ!?!?!

これはズゴすぎる数字。

更にサーブでも第1セット終盤の大差で負けているところからの連続ブレイクで逆転のチャンスを演出。

またディグも何本も上げてチームのピンチを救っていました。

個人で見ると、パドヴァはもちろん、モデナの選手たちと比べてもこの試合で終始ベストなパフォーマンスを見せていたのは髙橋でした。

もうすごすぎて記者席で笑ってましたから(笑)。

MEN IN BLACKは大興奮で「ガンバレ」コールを送ってました!

僕の斜め後ろにいたパドヴァファンの小さい女の子はワンプレーごとに雄たけびを上げてました(笑)。

もちろんモデナフォンも髙橋の素晴らしいパフォーマンスに舌を巻いていたことでしょう。

しかしそれでも勝てなかった。

勝てなかったどころか1セットも取れなかった…。

特に1, 3セット目なんてかなり僅差で、パドヴァがセットを取ってもおかしくはなかったんですが、あと1点が取れませんでしたね。

以前の福澤さんの解説の言葉を借りるならパドヴァとモデナはどちらもサイドアウト型のチーム。

しかしその中でもモデナの方が強力なサーバーが多いのでブレイク力があります。

したがってパドヴァは意地でも先行して終盤まで試合を進めたかったと思いますが、各セットとも相手に先行される形となってしまいました。

またパドヴァのもうひとりのキーマンであるOPペトコヴィッチのサーブが走らなかったのも痛かったですね。

基本的にパドヴァは髙橋とペトコヴィッチのサーブ時が一番大きなブレイクチャンスなので、この2人のサーブが機能しないと勝つのはかなり難しいです。

パドヴァというチームにとって髙橋とペトコヴィッチは両輪。

どちらかがよくてもどちらかが欠けたらやっぱり試合に勝つのは難しい。

そういうことを考えた試合でした。

あと相手のOPラグムジアとMBサングイネッティを最後まで止めることができなかったですね。

彼らも髙橋と同じく失点ゼロでした。

レフトサイドのOHエンガペとOHリナルディはある程度抑えられていただけにこれも悔しいポイントです。

でも毎回課題となるサーブレシーブについては1セット目を除けばよく耐えられていたと思いますし、3セット目に抜擢されたガルディーニにも攻守の面で可能性を感じられたのは収穫だったと思います。

ガルディーニについては、セッターとのコンビネーションをもっと合わせられればスタメンでも全然いいと思う。

ディグもよく上げてたし、ブロックも高いし。

でも個人として絶好調だっただけに髙橋にとってはかなり悔しい敗戦だったと思います。

3セット、終盤で17-20と点差が3点に広がってしまったときに悔しさで吠えていたし、試合が終わった後、応援団に挨拶するのを忘れてすぐベンチに座って何か考え込んでいたりもしていました。

でもこの経験がまたきっと彼をさらに一段も二段もレベルの高い人間へと進化させてくれることでしょう。

そんな髙橋を相手モデナのキャプテンで、ブラジル代表のブルーノが試合後にハグで讃えていました。

またどんなに悔しくても試合後にはしっかりと笑顔でファン対応されてましたし、インタビューでももう気持ちを切り替えて前に向かっているように感じました。

これからまたどんどん壁を乗り越えて、僕たちの予想をいい意味で裏切って、どんどん成長していってほしいと思います!!

帰り、霧がかかっていました

写真:LegaPallovoloSerieA, 筆者撮影

この試合後の選手のコメントはこちら↓

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