試合レポート

石川祐希所属ミラノ、ピアチェンツァに勝利目前でまさかの逆転負け

2022年11月22日

イタリア男子バレーボールリーグセリエA第8節、リーグ7位の石川祐希所属ミラノは現地時間11月20日(日)にホームで同8位のピアチェンツァと対戦し、2-3(18-25, 25-21, 25-23, 22-25, 13-15)でミラノが敗れました。

石川祐希はスタメンで出場し、チーム最多の19得点をたたき出しましたが、チームは勝利を逃しました。

第1セットスタメン

ミラノ

OH:石川、
MB:ヴィテッリ(イタリア)
OH/MB:メルガレホ(キューバ)、エバディプール(イラン)
OP/MB:パトリィ(フランス)
S:ポッロ(イタリア)
L:ペサレージ(イタリア)

ピアチェンツァ

OH:ルカレッリ(ブラジル)、レアル(ブラジル)
MB:シモン(キューバ)、カネスキ(イタリア)
OP:ロマノ(イタリア)
S:ブリザール(フランス)
L:スカンフェーラ(イタリア)

※ポジション:OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OP=オポジット、S=セッター、L=リベロ

この試合のスタッツはこちら

試合レポート

この試合、ミラノは先週からコンディション不良で出場を控えていたMBピアノに加え、試合当日にMBロセルも出場できないことが発覚し、急きょ変則的なフォーメーションで試合に挑みました。

MBヴィテッリの対角に本来OHのエバディプールを配置し、エバディプール、OHメルガレホ、OPパトリィの3人がローテンションや状況に応じてミドルブロッカーポジションに入ってプレーしていました。

第1セットはやはり急造フォーメーションのミラノが苦しみます。

序盤からピアチェンツァがOHレアルのスパイクで確実にサイドアウトを取るのに加え、MBシモンのエースとMBカネスキのブロックでブレイクに成功して2-5とリードします。

ミラノもOPパトリィのスパイクなどで応戦しますが、中盤レアルのサービスエースから3連続ブレイクで10-15とピアチェンツァが更にリードを広げます。

その後もミスが続いて反撃の機会を得ることができなかったミラノは、最後もレアルの鋭いパイプ攻撃を浴びて18-25であっけなくこのセットを落とします。

しかし第2セットはスタートから石川がピアチェンツァのOPロマノをブロックで仕留めて1点目をもぎ取ると、その後サイドラインいっぱいのサービスエースとキレのあるパイプ攻撃を決めて5-2とミラノがリード。

その後も必死につないだボールからのメルガレホのスパイクやセッターポッロのエース、石川のスパイクなどディフェンスとサーブが機能したミラノが得点を決めて15-10と第1セットとは逆の展開を見せます。

ミラノは終盤までそのまま突き進み、最後エバディプールが強烈なスパイクで相手ブロックを弾き飛ばして25-21でセットを取り返します。

第3セット、ピアチェンツァはこのセットからMBカネスキに代えてチェステルをスタートから起用します。

エバディプールのクイックでミラノが1点目を取り、続けてパトリィにエースが出て3-1としたミラノがそのまま勢いに乗るかと思われましたが、ピアチェンツァもレアルの連続アタックですぐさま追いつきます。

その後もミラノのヴィテッリがブロックでレアルを止めると、ピアチェンツァのセッターブリザールも石川のスパイクをシャットアウトするなど、片方がブレイクするとすぐにもう片方もブレイクを決めて追いつくという点差が広がるようで広がらない気移行した展開のまま試合は終盤を迎えます。

19-20と先に20点に乗せたのはピアチェンツァでしたが、22-22の場面からポッロエース、エバディプールのシモンを止めるブロックで連続ブレイク成功したミラノが24-22とセットポイントを握り、最後はブリザールのサーブがアウトになってこのセットもミラノが取り切ります。

第4セットはレアルのスパイクとパトリィの連続失点でピアチェンツァが1-4とスタートダッシュに成功します。

ミラノも石川の巧みなロールショットやブロックアウトで7-8と詰め寄りますが、その後なかなかブレイクをとれず、逆にミラノに恐れていたローテンションミスなどが出てしまい14-19とリードを広げられてしまいます。

しかしその後石川が相手レシーバーの間を射抜くキレキレのサービスエースを連続で決めて17-19とすると、続くヴィテッリにもエースが出て19-20と1点差まで詰め寄ります。

ただしミラノの反撃は続かず、最後は石川のスパイクがロマノのブロックに阻まれ22-25でこのセットをピアチェンツァが取り、勝負はタイブレークへもつれます。

運命の最終セット、石川がスパイクでミラノにファーストポイントをもたらしますが、2度目のスパイクはブリザールのブロックに阻まれてピアチェンツァが1-3とリードします。

タイム明けにヴィテッリのスパイクでミラノがサイドアウトを取ると、第4セット同様再び石川のサーブがピアチェンツァコートを襲い、サービスエースを含む4連続ブレイクで6-3として流れを一気にミラノに引き寄せます。

8-6とミラノリードでコートチェンジをすると、そこから今度はポッロの好サーブで相手のミスを誘うなどして3連続ブレイクに成功したミラノが11-6とリードを更に広げて試合を決定づけたかに見えました。

しかしレアルのスパイクやルカレッリのエースで12-11とピアチェンツァが1点差まで迫り、ミラノも石川のスパイクで切って13-11としますが、直後にまたレアルが決めて13-12とミラノのマッチポイントを許しません。

逆にここから石川のスパイクミス、更にパトリィがレアルのブロックに捕まってピアチェンツァが13-14とマッチポイントを握ると、最後はシモンのショートサーブがエバディプールの前に落ちて13-15となり試合終了。

まさかの逆転でこのセットを落としたミラノがフルセットでピアツェンツァに敗れる結果となりました。

MVP:OHヨランディ・レアル(24得点(うちサーブ1、ブロック1)、アタック決定率65%)

石川もチーム最多の19得点(うちサーブ4、ブロック1)、アタック決定率47%のMVP級の活躍をしましたが、チームを勝利に導くにはわずかに及びませんでした。

これでミラノは通算4勝4敗11ポイントで暫定8位となりました。

次週は現地時間11月26日(土)18:00(日本時間翌2:00)から、アウェイでトレントと対戦します。

感想など

この日は現地観戦・取材でした。

前回ミラノのアリアンツクラウドに来たときも相手がピアツェンツァで、そのときはミラノが負けてしまっていたので今回こそはミラノが勝った姿を見たかったのですが、まさかこのような結末になるとは思ってもみませんでした。

会場にはかなりのお客さんが詰めかけていて、特にベンチ裏のコートサイドは上までほとんど埋まっているように見えました(公式発表では3318人の入場者数だったようです)。

相手のピアツェンツァもミラノから近いですし、またピアツェンツァにはミラノ近郊のモンツァ出身で、昨シーズンはミラノに所属し、今年の世界選手権でスタメンオポジットとして見事にイタリア代表の優勝に貢献したロマノがいたのも大きかったのかもしれません(実際会場アナウンスでロマノが紹介されたときにアウェイにもかかわらず凄い歓声が上がっていました)。

ミラノの石川は試合前のウォームアップからリラックスした表情でパトリィとパスしていました。

ただピアノはアップしてないし、ロセルもなんか上着きたままで…、あれおかしいな…。

そしていざスタメン発表で、「メルガレホ!」「石川!」ときて、「お、今日は先週のパドヴァ戦でよかった石川・メルガレホ対角なのか!」と思いきや「エバディプール!」「????」

僕は混乱しました。

よく見たらロセルはそのままユニフォームを着ずにベンチアウトしている、つまりミドルがヴィテッリしかいないからアウトサイドのひとりをミドルとして起用する戦法のようでした。

ピアッツァ監督は5シーズン前にポーランドのベウハトフで、3シーズン前にミラノで同じようなことをしたことがあったのですが、まさかそんなある意味貴重な試合をまさか生で見られることになるなんてちょっとワクワクしていました。

ロセルも見たかったけど、これはこれでありでした(笑)

ただこんな変則陣形で強豪ピアチェンツァに勝てるのかと思っていたら、案の定1セット目はかなりバタバタしていて、簡単にセットを落としました。

石川もこのセットは終盤にようやくスパイクで1点を決めるだけで目立った活躍なく調子悪そうな感じで、「今日はこのままあっさり終わっちゃうんかな…」というしょんぼりした僕でした。

でも2セット目から始まった石川劇場。

ブロック、スパイク、バックアタック!!

来てる来てるよ!!

さらにポッロの献身的なプレーからの連続メルガレホスパイク!!

元気印メルガレホが決めるとチーム全体も明るくなる。

面白くなってきた!!!

ピアチェンツァのレアルは相変わらずスパイク決めまくっているけど、変則ミラノも負けてない!

そして勢いに乗って2, 3セット取った!!

エバディプールとメルガレホ、普段サイドの選手がクイック決めると盛り上がるし、石川先生2セット目以降キレキレやし、みんなめっちゃ拾う。

ピアチェンツァもブリザールが3枚ブロックに対してスパイク決めてたし(セッターなのに(笑))。

なんか物凄い試合でした、エンタメ性抜群の試合。

取っては取られ、ブレイクしてはブレイクやり返して。

もうたまりませんでした!

また記者席からは選手たちの表情もよく見えて、石川は自分が決めたときよりもチームメイトがポイントを決めたときの方がめっちゃ喜んでいて、エバディプールが難しいボールを決めたときは顔真っ赤にして喜んでましたし、ポッロがエース取ったときはすぐに近づいて抱き着いていたりとか(笑)。

第4セットはピアチェンツァのペースだったんですけど、石川の連続エースは圧巻でしたね。

僕の席がちょうどエースを取ったサーブコース延長線上だったので、その軌道がはっきりと見えて、ルカレリとスカンフェラが構えている間にちょうどサーバー石川が見えたんですけど、ほんとにそのまま僕にめがけてサーブがズバッ!と襲い掛かってきました。

しかも2本も。

いやなんという贅沢な光景を見ているのだ私は。

それが更に第5セットにも同じコースにきて、もうなんか大興奮で、そのあとポッロのサーブでもブレイクして、手汗がだらだらにじみ出ていて、「このままいけば勝てる、そしてMVPは十中八九ユウキ・イシカワ、今シーズン初のMVP、変則フォーメーションで強豪ピアチェンツァにミラノが勝利、なんて瞬間に立ち会おうとしているんだ自分は、最高か」と勝手に妄想をどんどん膨らませていました。

13-13とピアチェンツァが追い付いてきたときも気持ち的には落ち着いていました。

あと2ローテでまた石川にサーブが回ってくるので、そこまでサイドアウトでしのげれば絶対ミラノが勝つと信じてやまなかったからです。

むしろ「こんな最後までスリリングな試合を見れて最高!そして最後に石川のエースで締めだ!」みたいに思っていました。

しかしその後石川にサーブが回ってくることはなく、最後はシモンのショートサーブのエースであっけなく、デュースもいかず終了。

…え、…終わったの?

正直現実を受け入れるのに十数秒時間を要しました。

ミラノが勝った姿、勝った場合の石川へのインタビューしか用意してなかったのでなんかもう何を聞いてよいかわからない。

なんだこれは、なんなんだこの感情は。

悔しい、たしかに悔しいけど、その一言では決して表せない感情がそこにありました。

でも、本当は本人がいちばん悔しいのに、石川選手は笑顔でインタビューに対応してくれました。

またファン対応も最後のひとりまで全員に対応されていました。

だからやっぱり彼は多くの人たちから応援されるし、愛されるんでしょう。

次回こそそんな彼のチームが勝利する試合に立ち会って、MVPおめでとうございますと言いたい。

そう心に誓い、この日は会場をあとにしました。

写真:Lega Pallovolo Serie A、筆者撮影

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