コラム

ウクライナ男子バレーボール代表の「ホームゲーム」

2023年6月現在、日本代表も参加しているバレーボールネーションズリーグ(VNL)が行われるなか、ヨーロッパではVNLに参加していない国で争われるヨーロピアンリーグが開催されています。その上位リーグであるゴールデンリーグに、未だロシアと戦争状態にあるウクライナ代表チームも参加しています。

リーグの予選ラウンドはホームアンドアウェイ方式で行われていますが、当然ながら戦時下のウクライナ国内で試合は行われていません。その代わりにポーランドのウッチという街でウクライナ男子代表のホームゲームは行われています。

2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、ポーランドはウクライナと国境を接していることもあり、ロシアを除いて最も多くのウクライナ人避難民を受け入れた国です。その数少なくとも150万人。そしてウッチ市も2022年10月時点で12万人の避難民を受け入れています。戦争前の市の人口が70万人弱だったことを考えると、元々の人口に対していかに多くの避難民を受け入れたのかがお分かりいただけるでしょう。

したがって取材した6月14日のベルギー代表との試合も、会場に来ていた860人のお客さんのほとんどはウクライナ人サポーター。試合前の国歌斉唱のときには多くの人が胸に手を当てて選手と一緒に歌い、試合中は祖国の国旗やマフラータオルを掲げながら代表チームに大きな声援を送っていました。

また会場DJもウクライナの曲を流してお客さんを盛り上げていましたし、さらには応援団長みたいなお客さんが何人かいて、その人たちが「スラーヴァ・ウクライニ(ウクライナに栄光あれ!)」と叫ぶと他のお客さんたちが「ヘローヤム・スラーヴァ( 英雄たちに栄光あれ!)」と叫び返すなど、とても一体感のある会場でポーランドながらもそれは完全にウクライナのホームゲームでした。

試合の様子

実はバレーボールのウクライナ男子代表は、昨年行われた世界選手権でもベスト8に入るなど近年かなり力を付けているチームです。この日の試合でもその実力が遺憾なく発揮され、世界最高峰イタリアリーグの強豪ペルージャでもプレーするキャプテンのプロトニツキや同じく世界トップのポーランドリーグでプレーするトゥプチィらの力強いスパイクが次々と決まり、ウクライナがベルギーに3-0で快勝しました。ウクライナ代表はここまでの5試合をいずれも3-0のストレートで勝利し、予選ラウンドの試合をあと1つ残してすでに準決勝進出を決めています。

「この会場の雰囲気はとてもよいです。大きなエネルギーがあって、自分たちをプッシュしてくれます」とプロトニツキ主将。日本の人々へメッセージをお願いすると、「日本でも多くの人々がウクライナへのサポートをしていただいていると思います。本当にありがとうございます。そしてどうかそれを続けてください。私たちとってそれはとても大事なことだからです。また私のナショナルチームやクラブチームの試合を見に来てもらえるとうれしいです。会場で会いましょう!」と語ってくれました。

プロトニツキ主将

写真:CEV, 筆者撮影

-コラム
-, , ,