コラム

福澤達哉選手の引退に思う

2021年7月17日

先日、バレーボール男子日本代表の福澤達哉選手の引退が発表されました。

https://vbm.link/57327/

福澤選手は僕にとっても特別なバレーボール選手でした。

僕が福澤選手のことを知ったのは、まだ彼が中央大にいた時期でした。先に2007年のワールドカップで同い年の清水が大活躍して、そこから福澤選手のことを知ることになりました。映像でちゃんと見たのは2008年の北京OQTのとき。このときは主にリリーフサーバーでの起用だったと思いますが、その跳躍力にはやはり度肝を抜かれました。身長189㎝なのに最高到達点355㎝ですからね。のちに「空中の支配者」なんてキャッチフレーズがつきましたけど、本当に高く空中で止まっているかのようなジャンプは何度見ても惚れ惚れしていました。たしかにプレーに粗さは見られましたが、左のパワー系エース清水と右のジャンプ系エース福澤の2枚看板がいれば北京後のチームも面白そうだな~とワクワクしながら試合を見ていたことを覚えています。

実際、その翌年に開催されたグラチャンでのパフォーマンスは本当に素晴らしかったです。その年のヨーロッパチャンピオンだったポーランドを初戦でフルセットで撃破し、日本男子32年ぶりのメダルを獲得。福澤選手自身もアタック決定率が大会通算55.81%で1位となり、ベストスパイカー賞を受賞します。この数字はレアル(元キューバ、現ブラジル代表)、クレク(ポーランド代表)、レオン(元キューバ、現ポーランド代表)など現在でも世界トップで活躍する名だたる選手たちを抑えての記録でした。このころは本当に福澤選手には期待しかなかったです。彼のプレーは大好きでした。彼と清水選手でこの次の世界選手権も、そしてロンドンオリンピックも、前回以上の成績を残してくれるんじゃないかと妄想していました。

ところが2010年以降、低迷期が続いてしまいます。Vリーグでは毎年のようにベスト6、2012年にはリーグMVPにも選ばれるなど大活躍の福澤選手でしたが、代表チームでは苦しい状況が続きます。清水選手と同様に闇雲にスパイクを打って相手の高いブロックにシャットアウトされたり、サーブミスが多かったりと、次第に悪いイメージが上書きされるようになり、福澤選手を好きになれなくなってしまっていました。特に対角の米山選手のプレーが素晴らしかったのでより対照的に見えてしまっていたこともあるでしょう。しかしそれ以上にかなり期待していたからこその落胆の気持ちが大きかったのだと思います。とにかく見てられなかったです。

日本代表チーム自体は2015年のワールドカップで人気・実力ともに回復の兆しを見せますが、そこに福澤選手の姿はありませんでした。しかし、その翌年のリオ五輪世界最終予選で急に招集。ワールドカップの勢いのままにリオ五輪の切符を掴むかと思われましたが、批判を恐れずに言うとこのときの福澤選手のパフォーマンスは最悪でほとんど彼が原因で五輪出場を逃したと言っても差し支えないような印象でした。以前清水選手の記事で述べたように、清水選手は2015年のワールドカップでの活躍により悪いイメージが払拭されてまた好きになれましたが、福澤選手はこの事件により逆に更に僕の中での印象・評価を悪くすることとなったのです。

その後2018年からまた代表に復帰し、プレースタイルを大きく変えて2019年ワールドカップでは主に石川選手の対角としてスタメン出場し、4位入賞に貢献しました。この活躍で確かにリオOQTほどの悪いイメージはなくなりましたが、あの2009年ほどのワクワク感を彼から感じることはなかったです。確かに守備面の安定には目を見張るものがありましたが、なんか悪い意味でこじんまりした選手になった印象でした。スパイクやサーブでも以前あまり見られなかった軟打も積極的に使うようになりましたけど、かといって以前のような勝負ところでの頼りがいはないように見えました。いろんな意見はあるでしょうが、個人的にはこんな選手になってしまったことはとても残念でした。もっと高くアグレッシブで、かつミスや被ブロックが少ない、そんな選手になってほしかったなと思います。今回、東京五輪のメンバーから外れてしまいまいたが、サーブを含めたオフェンス面での勝負弱さが落選の要因だったんじゃないかと個人的には思います。

結局僕の中で、清水選手のようにまた好きになることができる前に、福澤選手は引退されました。本当に好きだった選手だけに、めちゃめちゃ期待していた選手だけに、またもう一度好きになってから引退を迎えてほしかったというのが本音です。

最後に。福澤選手、本当にお疲れさまでした。ビジネスマンになられてからのご活躍も期待しています。

写真:FIVB

-コラム
-, , ,