イタリア男子バレーボールリーグセリエA、石川祐希所属ミラノはペルージャとのプレーオフ準々決勝第5戦を現地時間4月10日(月)にホームで戦い、3-1(18-25, 25-21, 29-27, 25-23)で勝利しました。
石川祐希はこの試合もスタメンで出場し、チーム最多の18得点でチームの勝利に大きく貢献し、MVPにも選ばれました。
この結果トータル3勝2敗でミラノが準決勝進出を決めました。
第1セットスタメン
ミラノ
OH:メルガレホ(キューバ)、石川
MB:ロセル(アルゼンチン)、ピアノ(イタリア)
OP:パトリィ(フランス)
S:ポッロ(イタリア)
L:ペサレージ(イタリア)
ペルージャ
OH:セメニウク(ポーランド)、プロトニツキ(ウクライナ)
MB:フラヴィオ(ブラジル)、ルッソ(イタリア)
OP:エレラ(キューバ)
S:ジャンネッリ(イタリア)
L:コラーチ(イタリア)/ピッチネッリ(イタリア)
※ポジション:OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OP=オポジット、S=セッター、L=リベロ
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試合レポート
第1セット、石川のスパイク得点から始まった試合はそこからお互いにサーブミスが続いて7-7と点差が離れません。
しかしその後ペルージャがプロトニツキのサーブからセメニウクがスパイクを決めるなどして9-13とリードします。
さらにOHセメニウクのサーブからプロトニツキのスパイクやジャンネッリのツーアタックなどで一気に5連続ブレイクに成功したペルージャが14-22と大きく点差を広げます。
17-24の場面で石川がサービスエースを決めて一矢報いるも、最後はその石川のサーブがミスとなり18-25でペルージャがこのセットを取ります。
第2セット、序盤はプロトニツキのスパイクやエレラのブロックで連続ブレイクに成功したペルージャが5-8とリードします。
しかしポッロのサーブから自身のサービスエースや石川のアタックで4連続ブレイクを決めて、ミラノが11-9と逆転。
さらに石川のサービスエースなどで14-10とミラノが点差を広げます。
そこからミラノのミスやセメニウクのスパイクでペルージャが19-19と同点に追いつきますが、石川のサービスエースや途中出場のエバディプール(OH、イラン)のスパイクなどでブレイクしてミラノが24-20と一気にセットポイントを迎えます。
最後はセメニウクのスパイクがミスとなり、25-21でこのセットをミラノが取ります。
第3セット、序盤からポッロのサービスエースや石川のセットからのロセルのクイックなどで7-4とミラノがリードします。
ペルージャもエレラのサービスエースやセメニウクのスパイクで10-9と1点差まで近づきますが、パトリィのスパイクとエースで13-9とミラノがすぐに点差を戻します。
その後またエレラが連続でスパイクを決めてペルージャが19-18と1点差に迫ると、さらにジャンネッリのサーブからフラヴィオのブロックなどで3連続ブレイクを決めて22-23とペルージャが逆転に成功します。
しかしミラノが石川のスパイクで連続でサイドアウトを決めて24-24とデュースに持ち込むと、堅い守備からエバディプールがカウンターアタックを決めて27-26とミラノが再逆転。
そして最後はペルージャのエレラのスパイクがミスとなり、29-27でこのセットをミラノが取ります。
第4セット、出だしからポッロのツーアタックでミラノがブレイクを決めると、さらにラリーから石川のパイプ攻撃も決まり5-2とミラノがリードします。
ペルージャもエレラが連続してスパイクを決めますが、12-9とミラノのリードは変わりません。
しかしここで石川が着地時にロセルの足を踏んでしまい、脚を痛めてエバディプールと交代します。
ここからペルージャがセメニウクのブロックや途中出場のレオン(OH、ポーランド)のパイプ攻撃などで15-15と同点に追いつきますが、ミラノもメルガレホのサービスエースなどで18-16として逆転を許しません。
その後エバディプールのアタックミスで20-20とペルージャが再び同点に追いつきますが、そこから石川がコートに戻るとロセルのブロックで22-20と再度点差を広げます。
23-22のレオンのサーブの場面でも石川の完璧なパスからメルガレホがスパイクを決めて24-22とマッチポイントを握ると、最後はラリーから石川が渾身のパイプ攻撃を決めて25-23とし、ミラノが3-1でペルージャに勝利しました。
MVP:石川祐希(18得点(うちサーブ3)、アタック決定率37%、サーブレシーブ成功率54%)
この結果、プレーオフ準々決勝はミラノの3勝2敗で勝利となり、ミラノが準決勝進出を決めました。
準決勝の対戦相手はレギュラーシーズン4位のルーベ・チヴィタノーヴァです。
プレーオフ準決勝第1戦は現地時間4月13日(木)20:30(日本時間翌3:30)からアウェイのチヴィタノーヴァで行われます。
試合の感想など
快挙!!!!!!!!
石川祐希がまたミラノに新しい歴史を刻みました。
クラブ史上初のイタリアリーグ準決勝進出。
しかもレギュラーシーズン無敗という圧倒的な強さを見せていた首位ペルージャに3度も勝利、しかも最後は熱狂的なペルージャサポーターの大声援が飛び交うアウェイでの逆転勝利となりました。
この日は会場で試合の行く末を見守っていました。
ちょうど席の真後ろがペルージャ応援団だったこともあり、その声量が凄まじく、これまで数多くの試合を現地で見てきましたが、おそらく一番うるさい会場だったと思います(笑)。
そんな圧倒的ペルージャホームな雰囲気の中、2セット目の序盤まではスパイク、サーブ、ブロックがうまく機能したペルージャがミラノを寄せ付けずに理想的なバレーボールを展開していました。
しかし、石川曰く「雰囲気にやられていた」というそんな状況を救ったのが2セット目のポッロのサーブ。
そこで4連続ブレイクを決めてリズムを掴むと、あとは最後までほとんどミラノが先行する形で試合が進み、最後はこの日のMVPの石川のパイプ攻撃で締めて3-1でミラノの勝利となりました。
チーム最多得点、また守備での貢献とチームメイトへの声掛け、1点ごとに喜びを爆発させる姿、終盤勝負所での得点力など、MVP石川祐希の勝利への貢献度は計り知れませんが、あえてそこ以外でどんな勝因があったのか自分なりに3つ考えてみました。
①ミラノの堅い守り
まずサーブレシーブに関して、レギュラーシーズンセット当たりのサービスエース数1位のペルージャに対して4セットでその数を僅か1点に抑えられたことは非常に大きかったと思います。
石川やエバディプールはもちろん、サーブレシーブをあまり得意とはしていなかったメルガレホもサーブレシーブ成功率40%以上を保って失点ゼロ。
またレギュラーシーズンでは直接失点がやや目立っていたリベロのペサレージもメルガレホをカバーしつつ失点1のみと踏んばって、ペルージャを波に乗らせなかった。
ショートサーブもミドル陣がうまく対処できていたので、ペルージャもサーブでリスクを負わざるを得なくなったのではないかと思います。
またフロアディフェンスについてもブロックとレシーブの関係性がよくできていて、そのためにミドルプレイヤーも含めてよくディグが上がっていました。
またブロックタッチなど1本目が乱れた場面でも2本目への反応が凄まじく、意地でも繋ぐという執念を感じました。
こうしたプレーがペルージャにプレッシャーをかけ続け、結果的にセットを追うごとにペルージャのアタックエラーが増えた要因のひとつになったのではないかと考えられます。
またこの高いフロアカバーの力を前提としたリバウンドを織り交ぜた攻撃も非常に有効でした。
もともとは石川の代名詞的なプレーでしたが、今となってはミラノの代名詞的なプレーとなり、メルガレホもパトリィも難しい場面ではリバウンドを積極的に取り入れていました。
特に第4セットはアタック決定率が34%とペルージャよりも13%も低いにもかかわらず、効果率((得点ー失点)/本数)では1ポイント上回っていることからアタック失点のマネジメントがチーム全体でうまくできていたことが伺えます。
こうした高いチームディフェンス力で、他のチームなら失点になるような場面でもラリーが繋がり、そのうちの少なくないボールがミラノのポイントとなっていました。
これらの守備的な要素に関しては、特にプレーオフの間でメルガレホとペサレージのパフォーマンスが大きく改善し安定したことがカギだったと思います。
この第5戦は特にその集大成とも言える彼らの数字には残らない素晴らしいプレーが数多く見受けられました(2セット目の5点目のメルガレホが繋いで石川が難しいハイボールを得点にするシーンなんてめちゃよかった)。
②セッターポッロ
個人的にはこの選手にもMVPをあげたい。
まず何と言っても2セット目序盤までのペルージャムードを断ち切ったのは彼のサーブからでした。
あのプレーがなければミラノがそのまま飲み込まれて第1戦同様にストレート負けとなっていてもおかしくはなかったと思います。
ポッロが切りひらいて石川が決めた、そんな試合だったのではないでしょうか。
またその後の組み立てもすばらしかったと思います。
ミドルとパイプ攻撃の真ん中の使い方はこの日も秀逸で高い決定力を誇っていました。
また個人的に評価したいのがパトリィの使い方。
先週の第4戦と比べるとそこまで状態のよくなかったパトリィでしたが、比較的いい状態でスパイクを打たせられるようにセットをあげていたように見えましたし、仮に失点してもすぐにまた得点のチャンスを与えてパトリィ自身にそのミスを引きずらせないようにしていたように感じました。
その結果、パトリィ自身も試合の中でそこまで調子を落とすことなく、4セット目には少し難しい場面でも得点を決めてくれていたのではないかと思います。
セット終盤に石川に打たせることもそうですが、相手の状況のみならず、味方アタッカーの状態もよく見てチームにとって最善の選択がうまくできていたように見えました。
③ペルージャのメンタル不全
ペルージャは明らかにメンタル面で問題を抱えてたと思います。
ペルージャのアナスタージ監督も試合後に「ナーバスになっていた」と語るように、準々決勝の第2戦でミラノに敗れて以降、それまでシーズンを通して1敗しかしてなかったにも関わらず、この日までの約20日のうちにチャンピオンズリーグも含めて4敗していました。
特にこの試合の4日前に行われた欧州チャンピオンズリーグ準決勝でペルージャホームで初めての敗戦とチャンピオンズリーグ敗退を味わい、そこから精神的にうまく立ち直ることができていなかったのでしょう。
スパイクミスが多かった、特に勝負所でのスパイクミスが多かったですし、第4セットにミラノが20点目を取った場面なんかはお見合いのような形で拾えるボールが拾えていませんでした。
サーブエースがレギュラーシーズンと同じように取れなかったのも、ミラノの守備力の高さもあったでしょうが、ペルージャのメンタル的要因も大きかったと思います。
正直準々決勝第1戦はミラノに危なげなく3-0で勝利し、多くのバレーファンもそしておそらくペルージャチームも、そのまま3連勝で準決勝に進んで、日程的に余裕をもってチャンピオンズリーグの決勝にも駒を進める未来を思い描いていたことでしょう。
正直僕自身もそうなると思っていました。
しかし現実は一度崩れると案外脆いもの。
今シーズンのペルージャは45戦39勝6敗。
しかしこのわずか6敗で、コッパイタリア、欧州チャンピオンズリーグ、そしてイタリアリーグと重要タイトルをすべて逃しました。
こうなるとやはり、負けてもいいときも負けておくというのも案外大事なのかもしれません。
あと試合中のペルージャファンの声援、そしてミラノサーブ時のブーイングもすごかったですが、負けた後の雰囲気もなんともすごいものでした。
負けた自分のチームにねぎらいの拍手を送るサポーターがいるなか、少なくないファンがペルージャの選手たちに対してブーイングを送ったり、中には暴言を吐いたりしている人もいました(それに対してセメニウクが顔を真っ赤にしてキレていました)。
確かに途中まで圧倒的最強チームで、チャンピオンズリーグやイタリアリーグのタイトルは獲得して当然で議論の余地がないような感じでしたから、そこからこのわずか5日間で2タイトル獲得の可能性を同時に失ったファンの失望感や大きく裏切られたような気持ちは計り知れません。
ただ彼らにもまだ5位決定戦が控えているので、ここで腐らずに、もう一度強いペルージャを見せてほしいと思います。
一方のミラノは本当にお祭り騒ぎ。
マッチポイントを決めた石川は、その後高校生のようにコートを駆け回ってエンド側のスタッフさんたちと熱く抱擁していました。
ご報告遅れましたがミラノの勝ちました!!!アメイジング!!!!! pic.twitter.com/29rmFhE687
— トシキ TOSHIKI (@toshikit71) April 10, 2023
しかし、いざインタビューとなるといつも淡々と答えるモードに(笑)。
でもやっぱりいつもよりは明るい表情を見せてくれていました。
いやでもやっぱりまだまだ壁を感じます。
なんならそんなに言葉を交わしていないエバディプールやポッロやロセルの方が近づきやすい(笑)。
でもいつか「あ、ちょっと壁崩せた」と思えるような言葉を交わせるようになれたらと思います。
それまでこの侍の進化を見届けたいと思います。
さて、次の相手はルーベ。
ヴェローナとの準決勝を2連敗からの3連勝で逆転勝ちして準決勝に駒を進めた、ミラノ同様に勢いのあるチームです。
ミラノは昨年末のコッパイタリア準々決勝で1度勝利を収めましたが、そのときとはルーベのフォーメーションが大きく変わっているので、どういう試合になるかはわかりません。
第1戦はルーベホームかつ試合までの間がより短いミラノがリカバリー面でかなり不利かと思いますが、最強ペルージャを撃破した勢いそのままにルーベも蹴散らしてこのまま決勝まで行ってほしいと思います。
いやなんかもうこうなったら行く気がしてならないですね。
ピアツェンツァとの非BIG4同士の決勝戦に期待!!!!
写真:PowervolleyMilano