試合レポート

【解説】パリ五輪男子バレー準々決勝日本対イタリア:全力のぶつかり合い、1点の重み

バレーボール男子日本代表は現地時間8月5日(月)に準々決勝をイタリアと対戦し2−3(25-20, 25-23, 25-27, 24-26, 15-17)で敗れた。

スターティングメンバー

ポジション:OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OP=オポジット、S=セッター、L=リベロ

()は得点

日本

OH:髙橋藍(16)、石川(32)
MB:山内(6)、髙橋健太郎(5)
OP:西田(22)
S:関田
L:山本

途中出場:MB小野寺(1)、S深津、OP宮浦、OH大塚、OH甲斐

イタリア

OH:ミケレット(24)、ラヴィア(19)
MB:ガラッシ(11)、ルッソ(10)
OP:ロマノ(19)
S:ジャネッリ(5)
L:バラゾ

途中出場:Sスベルトリ

試合レポート

第1セット

序盤は競った展開となるが、OH石川のサーブからのブレイクチャンスで自らパイプ攻撃を連続で決めて9-7と日本が抜け出す。その後OP西田のサービスエースで13-10、さらにMB高橋健太郎のサーブからレシーブで繋いでOP西田やOH石川のスパイクで5連続ブレイクを挙げて20−12と一気に日本がイタリアを突き放す。そこからOPロマノのサービスエースやMBミケレットのブロックなどでイタリアも連続得点するが、最後はOHラヴィアのサーブがミスになり25-20でこのセットを日本が取る。

第2セット

OH石川のサービスエースで8-6と日本がリードするも、OHラヴィアのサービスエースやMBルッソのブロックなどで得点したイタリアが10-12と逆転する。さらにOHラヴィアのスパイクとMBガラッシのブロックで13-17とイタリアがリードを広げる。しかしそこからイタリアのミスやOH石川のサービスエースで17-17と日本が追いつく。その後イタリアがOPロマノのスパイクで17−19と再び抜け出すも、終盤でL山本の好守からOP西田とOH石川が続けてスパイクを決めて24-23と逆転でセットポイントを握る。最後もOH石川がスパイクを決め切り25-23でこのセットを日本が取る。

第3セット

序盤からOH髙橋藍のブロックやOP西田のサービスエースで6-3と日本が先行する。そこから日本はミドルのクイック、イタリアはOHミケレットのスパイクを中心にサイドアウトを取り合い13-9と試合が進む。そこからSジャネッリのブロックなどで13-12とイタリアが点差を詰め、さらにOHミケレットのスパイクなどで20-20と同点に追いつくが、OH石川がスパイクを決め続けて24−21と日本がマッチポイントを握る。しかしOH石川のスパイクミス、Sジャネッリのサービスエース、OHミケレットのOP西田を止めるブロックで24-25とイタリアが土壇場で逆転しセットポイントを握る。日本もOH石川のスパイクで一度サイドアウトを切るも、OHラヴィアが続けてスパイクを決めて25-27でこのセットをイタリアが取る。

第4セット

OPロマノのスパイクやMBガラッシのサービスエースで3-6とイタリアが抜け出す。日本はOH髙橋藍のスパイクを中心に得点するも、MBガラッシのブロックなどで7-11とイタリアが点差を広げる。そこから日本はOP西田とOH髙橋藍のサービスエースなどで12-13と1点差まで迫ると、終盤にイタリアの連続ミスで19-19と追いつく。さらにOH髙橋藍のサービスエースで21-20と日本が逆転するも、MBルッソのブロックにOH石川が捕まり21-22と再逆転を許す。その後デュースとなるが、最後もMBルッソがOH石川とOH髙橋藍のスパイクを続けてブロックで止めて24-26でこのセットをイタリアが取り切る。

第5セット

日本はMB高橋健太郎に代えてMB小野寺を起用。序盤はOP西田のスパイクなどで6-4と日本が抜け出すも、OH髙橋藍のスパイクがミスとなり8-8とイタリアが同点に追いつく。さらにOHミケレットのパイプ攻撃でブレイクを決めたイタリアが10-11と逆転に成功。そこから日本はOP西田のスパイクでサイドアウトを切り13-13と試合が進む。その後OH髙橋藍のサーブがミスになり13-14とイタリアが初めてマッチポイントを握るもOH石川がスパイクを決め切って14-14とデュース、さらに切り返しからOH石川がスパイクを決め切って15-14と日本のマッチポイントに。しかしMB小野寺のサーブミスで15-15、続けてOH石川がOPロマノのブロックに捕まり15-16でイタリアが再びマッチポイントを握ると、OHミケレットのサーブでパスが乱されいい状態でアタックを打てずブロックフォローで拾ったボールが相手コートに返ってしまいMBルッソのダイレクトスパイクで15-17となりこのセットをイタリアが取った。

この結果2-3で日本はイタリアに敗れ、準々決勝敗退となった。

TOSHIKI’S MVP

イタリア:シモーネ・ジャネッリ

セッター 200cm 所属:ペルージャ(イタリア)

5得点(うちサーブ1、ブロック2)、チームアタック効果率40.43%

第1セット途中では1度コートを離れましたが、その後見事にチームを立て直して大逆転に導いたキャプテン。特に3セット目、22-24の場面から渾身のサーブを打ち続けてサービスエースを含む3連続ブレイクを奪ったプレーはもう流石としか言いようがないです。28歳ながらこれが3度目のオリンピックでもうそのメンタルは大ベテランの域。脱帽でした。

日本:石川祐希

アウトサイドヒッター 191cm 所属:ペルージャ(イタリア)

32得点(うちサーブ2)、アタック効果率34.43%

復活したキャプテン。プール予選3試合では本来のプレーができず苦しみましたが、準々決勝では見事に復調し、両チーム最多32得点を挙げる大車輪の活躍を見せてくれました。本人としてはマッチポイントの場面で決めれず非常に悔しい思いをしたと思いますが、彼のパフォーマンスがなければむしろ今大会絶好調のイタリアに対してここまで戦うことはできていなかったと思います。本当にすばらしい勇姿を見せてくれました。

解説

この試合は本当に1点を争う壮絶な試合で、正直何が勝因で何が敗因であったかということを説明することは困難ですが、それを大前提として自分なりに特に良かったポイントを日本とイタリアで2つに分けてこの試合を分析していきたいと思います。

日本が良かったポイント

①石川祐希の復活

MVP紹介で述べたことと重複しますが、石川選手が本来のパフォーマンスを取り戻せたことは非常に大きかったです。オリンピック歴代4位の32得点を挙げたスパイクは前衛後衛関係なくよく決まっていましたし、サーブも2本エースも取ってよくブレイクが取れていましたし、守備も安定してサーブレシーブで大崩れすることもありませんでした。また石川選手が生き生きとしたパフォーマンスを見せたことで、予選のときの少し嫌な空気が払拭されてチーム全体として雰囲気よく勢いに乗れたと思います。

②ブロックとレシーブのトータルディフェンス

まずこの試合ではブロックポイントこそ2本と少なかったものの、イタリアのスパイクをブロックで触ってそこから切り返すという展開がよく見られました。

イタリアに限らず最近の対戦相手は、L山本選手やOH髙橋藍選手のスパイクレシーブが抜群にいいことを知っているので、ブロックを抜いてレシーバーと勝負するのではなくブロックに当てて得点することが増えました。

そんな中でも日本のブロッカーが相手にブロックを利用されるのではなく、綺麗にタッチを取って得点に繋げるシーンがこの試合はとても多かったと思います。また日本が苦手とする相手のミドルの攻撃に対してもかなり抑えることができていました。

特にOP西田選手が9本、MB山内選手が7本と多くのブロックタッチを取れていました。S関田選手も何度もブロック上からスパイクを狙われながらもしっかりと腕を伸ばして5本のタッチを取りました。

またレシーブに関してはL山本選手とOH髙橋藍選手を中心に両手片手関係なく拾いまくり、つなぎやブロックフォローでも追いかけてギリギリのところで取って何度も日本ピンチを救いました。

③ミドルを潰す攻めのサーブ

日本のサーブがうまく走ったことも間違いなく日本がここまで戦えた大きな要因だったと思います。

OP西田選手が3本、OH髙橋藍選手とOH石川選手がそれぞれ2本ずつの計7本のサービスエースが出たのも良かったですが、それ以外の選手も含めてとてもいいサーブを打てていました。

強いサーブだけでなく、コントロールサーブでも相手のアタッカーの助走を潰すなどして、特にイタリアのミドルブロッカーの得点を減らすことができたのは大きかったと思います。

予選のドイツ戦とアメリカ戦では日本が相手のクイックにやられて部分が大きく、イタリアもそれをわかっていて理想的にはもっといい状況でクイックを使いたかったでしょうが日本のサーブがそれをさせませんでした。逆にたまにいいサーブレシーブをされた時にしかクイックが使えないので、そうした場面では日本のミドルが状況を読んで上手く対応できていました。

イタリアが良かったポイント

①ブロック

なんと言ってもブロック。日本がイタリアの何に敗れたかという問いに対してシンプルに答えるならブロックということになるでしょう。

日本のブロックポイントがわずか2本だったのに対し、イタリアは計15本のブロックポイントを決めました。その中でもMBルッソ選手が1人で5得点10タッチと大活躍で、特に終盤の勝負どころで日本からブロックポイントを奪ってイタリアの窮地を何度も救いました。

またイタリアの選手たちは単純に日本のアタックを止めに行くだけでなく、ブロックに跳んだ後に手を引くなどの駆け引きをよく行っていて、日本の強みであるリバウンドやブロックアウトに対策していました。特に試合後半の勝負どころでイタリアのブロッカーがその腹の探り合いに勝って、日本のアウトや被ブロックを誘うことに成功していました。

②アタック失点の少なさ

イタリアはアタック失点が非常に少なかったです。

日本のレシーブに拾われることは多かったので、その割にアタック効果率はそれほど高い数字にはなりませんでしたが、フルセットマッチで被ブロック2本、アタックミス8本の計10点とアタックによる失点を最小限に抑えることができていました。

同じフルセットで敗れたドイツ戦ではドイツに15本のアタック失点があったので、これと比べてもとても低い数字です。

日本のレシーブに拾われる中でも、イタリアのアタッカー陣は下に叩きつけず、奥の長いコースに打ち続けてブロック失点を抑え、かつアウトやネットのミスも最小限に抑えられていました。

特にOHミケレット選手はチーム最多の48本のスパイクを打って失点が僅かに2点でした。この数字はとてもすごいです。

③百戦錬磨のセッター・ジャネッリ

MVP紹介でも書きましたが、やはりあの24-22で日本がサイドアウトを1本とればいいという状況からひっくり返されてセットを取られてしまったことは、試合の最後まで選手たちのメンタルに響いていたのではないかと思います。

あの逆転劇を作りだしたのは紛れもなくサーブを打ったSジャネッリ選手でしたし、特に同点に追いつく24点目を決めたサービスエース、あの場面であの日本が一番苦手とするOH石川選手とL山本選手の間ドンピシャにサーブを打ち込める選手は世界でもほとんどいないと思います。

2022年の世界選手権決勝戦においてもそれまで対戦相手のポーランド優勢だったところ、彼のサーブから一気に流れを変えてそのまま優勝するということがありました。

彼はそういうことができる選手。

オリンピックは3回目でスタメンセッターとしてリオ五輪で銀メダルを取っていますし、2021年ヨーロッパ選手権、2022年世界選手権の両方で優勝&MVP。クラブチームでの功績も足すとイタリアリーグ優勝、MVPと本当に実績にはキリがありません。

あの時、あの場面で彼にサーブが回ってきたというのも何かの運命だったのでしょうし、本当にただただ凄かったというほかありません。

総括

もちろんこれら以外にも様々な要素、要因が複雑に絡んだ結果が今回の試合だったと思いますが、僕個人としてはこれらの点を挙げてみました。

こうした要素のぶつかり合いの結果、本当に僅かにイタリアが上回ったという試合だったというのが僕の見解です。

日本代表がここで敗れてしまったことは本当に残念ですが、本当にお互いに全力を尽くした素晴らしい試合だったと思います。

それと同時に1点の重み、バレーボールの面白さと厳しさを教えてくれた試合でもありました。

また個人的な感想については、大会が終わった後に改めて書きたいと思います。

日本代表の皆さん、本当にお疲れ様でした。興奮と感動をありがとうございました。

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[配信日時]

7月27日(土)午後5時 男子#1 男子#2
8月 3日(土)午後5時 女子#1
8月10日(土)午後5時 女子#2
8月24日(土)午後5時 男子#3
8月31日(土)午後5時 女子#3
9月 7日(土)午後5時 男子#4
9月14日(土)午後5時 女子#4

(TBSテレビリリースより引用)

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写真:Volleyball World

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