パリ五輪予選プールC、男子日本代表は現地時間8月2日(金)にアメリカと対戦し1−3(16-25, 18-25, 25-18, 19-25)で敗れた。
しかし日本は1セットを取ったことでセット率でプールA3位の成績を超えるため、全体8位での準々決勝進出を決めた。
スターティングメンバー
ポジション:OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OP=オポジット、S=セッター、L=リベロ
()は得点
日本
OH:髙橋藍(9)、石川(5)
MB:小野寺(2)、山内(7)
OP:西田(18)
S:関田
L:山本
途中出場:OH大塚(6)、MB髙橋健太郎(6)、OP宮浦(1)、S深津、OH甲斐
アメリカ
OH:ラッセル(12)、デファルコ(14)
MB:ホルト(8)、エイヴリル(14)
OP:アンダーソン(16)
S:クリステンソン(4)
L:ショージ
途中出場:OHジェスキー(1)、OHムアグトゥティア、MBスミス
試合レポート
第1セット
序盤からMBエイヴリルのスパイクなどで3-7とアメリが抜け出す。その後もOHデファルコのスパイクやMBエイヴリルのサービスエースなどでアメリカが連続得点を決めて12-17とリードを広げる。日本はOP西田で得点を重ねるも、それ以外のアタッカーがアメリカのブロックに阻まれ、さらにOP西田も連続してブロックに捕まり13-20と点差が広がる。最後は日本のサーブミスで16-25となりこのセットをアメリカが取る。
第2セット
このセットから日本はMB小野寺に代えてMB髙橋健太郎を起用。MBエイヴリルがOP西田とOH髙橋藍を止める3連続ブロックを決めるとさらにMBホルトのサービスエースも決まり0-5と出だしからアメリカが一気に抜け出す。MB髙橋健太郎のブロックで8-10と日本が点差を縮めるも、OHデファルコのスパイクなどでアメリカに連続得点を決められ9-14と再度点差が広がる。中盤はラリーで繋いでOH石川やOP西田が日本が得点して14-17となんとか食らいつく。しかしMBホルトのスパイクやOPアンダーソンのサービスエースで17-24とアメリカがセットポイントを握ると、最後はリリーフサーバーOH甲斐のサーブがミスとなり18-25でこのセットもアメリカが取る。
第3セット
このセットから日本はOH石川に代えてOH大塚を起用。そのOH大塚のスパイクなどで序盤からしっかりサイドアウトが取れるようになり、そこからMB山内のブロックなどが決まり9-6とこの試合初めて日本が2点以上リードする。その後も日本の勢いが止まらず、OH髙橋藍の事実上のサービスエースやパイプ攻撃、MB髙橋健太郎のブロックなどで得点を重ねて16-9とリードを大きく広げる。アメリカもSクリステンソンのブロックなどでブレイクするも、終盤はOP西田がアタックを決めまくり、さらにOP西田にブロックも出て日本が22-14とする。そこからOPアンダーソンのサービスエースなどでアメリカが3連続得点を決めるも、最後はMB山内のサービスエースで25-18として日本がこのセットを取る(ここで日本の準々決勝進出が決まる)。
第4セット
日本はOP西田、アメリカはOPアンダーソンらで得点を重ねて7-7と試合が進む。そこからMBエイヴリルのブロックなどでブレイクしたアメリカが8-11と抜け出すが、日本もOP西田のアタックなどでブレイクして15-15と同点に追いつく。しかしMBホルトのサーブからOHデファルコらが得点を重ねて4連続得点で15-19、さらにMBエイヴリルのブロックで16-21とアメリカが一気にリードを広げる。そのまま最後はOHラッセルがスパイクを決めて19-25でこのセットをアメリカが取り切る。
この結果日本は1-3でアメリカに敗れたものの、プールC3位、全体8位で準々決勝進出を決めた。
TOSHIKI’S MVP
アメリカ:テイラー・エイヴリル
ミドルブロッカー 195cm 所属:モンツァ(イタリア)
14得点(うちサーブ1、ブロック6)、アタック効果率87.50%
スパイク、サーブ、ブロックの全てで日本を苦しめたミドルブロッカー。特にブロックでは6得点を挙げて日本のアタッカーを大いに苦しめ、クイックでも対格のMBホルトと共に高い決定力で大きな存在感を見せた。また明るいキャラクターで、アメリカチームのムードメーカー的な役割も担っているように見える。こういう選手を乗せると本当に厄介だ。
日本:西田有志
オポジット 187cm 所属:大阪ブルテオン
18得点(うちブロック1)、アタック効果率36.11%
チームが劣勢の中でもひとり得点を決め続け、チームを鼓舞し続けた。高いジャンプからのパワフルなスパイクはもちろん、軟打でも得点してその引き出しの多さを改めて示した。彼の活躍がなければ3セット目の快進撃もなかっただろう。キャプテンのOH石川の調子が上がらない中、得点面でOP西田が本当によくチームを引っ張っている。ただ代名詞のサーブに関してはこの試合はあまり走っていなかったので、準々決勝では再びサーブでも暴れてくれることを期待したい。
解説
アメリカの強力なサーブ&ブロックに苦しんだ1、2セット目
最初の1、2セット目はアメリカに一方的にやられる展開となってしまったが、そのアメリカを支えていたのがサーブとブロックだった。
サービスエース数自体は2セット目まで各セット1本ずつだったが、どの選手も非常に強力なサーブを打ち込み続けて、うまく日本の攻撃の選択肢を奪ってブロックの的を絞ることに成功していた。
特に日本の攻撃の中心であるOH石川をサーブターゲットとし、そのサーブにOH石川がうまく対応できなかったことでOH石川の攻撃参加回数、決定率を下がった。
ブロックは元々組織的なリードブロックが特徴のチームなのに加えて、上記のようにサーブが機能していたことから日本はアメリカのブロックをなかなか掻い潜ることができなかった。
アルゼンチン戦であれほど決まっていたMB小野寺のクイックに対してもうまくタッチを取られていた。特に2セット目は5本のブロックポイントでアメリカが試合を有利に進めていた。
逆に日本は得意のサーブが走らず、アメリカの多彩な攻撃にほとんど好き放題に攻撃を決められてしまった。特に相手のクイックに対してはほとんど対応できず。アメリカはOPアンダーソンもほとんどのポジションでサーブレシーブに参加できるので、強いサーバーに対しては4枚レシーブで対応していてそれを崩すのは困難だった。
アタックに関してはこれまでであれば無理をせずにリバウンドを取りに行くような場面でも強く打ちに行ってシャットアウトを食らってしまう場面が多かったように見えた。ただそんな中でもOP西田が得点を決めてくれていた。
大塚投入、ポジションチェンジで動いた第3セット
第3セットからブラン監督は調子の上がらないOH石川に代えてOH大塚を投入。さらにOH髙橋藍をOH石川のポジションであるポジション2(ローテションでセッターと隣合うポジション)に据え、OH大塚をOH髙橋藍のポジションであったポジション5(オポジットと隣合うポジション)に据えた。
ポジション2はサーブレシーブ時に1度だけライト側からアタックを打つローテーションがあり、日本代表ではライト側からの攻撃力を考慮してOH石川がここを担う。
一方でポジション2は後衛時に真ん中でサーブレシーブをする回数が2回(ポジション5は1回)あるので、一般的には守備的なアウトサイドヒッターの選手がポジション2を担うことの方が多い。
この場面ではアメリカのサーブにやられていたので、よりサーブレシーブを安定させるためにサーブレシーブの得意なOH髙橋藍をポジション2に据えたと思われる。日本代表ではOH髙橋藍はずっとポジション5だが、イタリアリーグではシーズンを通してポジション2でプレーしていたので本人としてもあまり不安はなかっただろう。
この結果、狙い通り日本のサーブレシーブが安定した。OH髙橋藍のサーブレシーブ回数が増えたほか、OH大塚個人のサーブレシーブもとてもよかった。
またOH大塚は攻撃面でもうまくブロックアウトを狙って得点を重ねた。サーブレシーブが安定したことでOH髙橋藍の武器であるパイプ攻撃もよく決まった。OP西田はさらに調子が上がってアタック決定率100%。
日本はサーブも改善。エースこそセットポイントを決めたMB山内の1本に留まったが、サーブミスが減ったことに加えてうまく相手を崩し、相手のミドルからの打数を減らすことができた。
それに伴ってブロックも改善されブロックポイントを3本挙げたほか、アメリカのアタックミスも増えた。特に8点目を取ったMB山内のMBホルトに対するブロックは効きただろう。
あとOH大塚の投入によりコート内が明るさを取り戻したように見えた。プレーだけでなく、こうした雰囲気を変えられる選手の存在というのはやはり大きな武器。
第4セットに再び立ちはだかったアメリカのサーブ&ブロック
第4セットも中盤までは互角の戦いを見せていたが、15-16からのMBホルトの強烈なサーブとMBエイヴリルを中心とするブロックに対応できず日本が連続失点してしまい、その後ブレイクすることなくアメリカにセットを奪われて試合終了となった。
やはり最後もアメリカを救ったのはサーブ&ブロック。特にブロックはこのセットを通してずっとタッチを取れていたので、あの場面でMBホルトのサーブとの相乗効果で一気に走られた。
日本もこのセット、もう少しサーブが走っていれば、さらに言えばサービスエースを取ることができていればよかったが、アメリカの4枚レシーブからエースを奪うのは難しかった。
総括
結果的に敗れてしまったが、あの絶望的な状況だった1、2セット目から3セット目を取れたことは非常によかったと思う。
準々決勝進出を自力で決めたことはもちろん、あんなに一方的な状況を一度でも打開できた経験はきっと次につながるはず。
また調子がよくなかったとはいえ、名実共に日本の柱であるOH石川を下げる判断をしたプラン監督の采配も素晴らしかった。とても勇気のいる決断だったと思うが、あのままOH石川を出し続けていたらストレートで負けてしまっていた可能性は大いにあった。
これで全体8位での準々決勝進出を決めたので、準々決勝では全体1位のチームと対戦することになる。日本時間8月3日現在対戦相手はまだ確定しておらず、アメリカ、イタリア、ポーランドのいずれかになる(この後日本時間4日0時からのポーランド対イタリアの結果次第)。
いずれにせよ非常に力のあるチームばかりなので、このままでは勝てない。特にOH石川の復調は必須である。準々決勝のコート上で暴れてくれるキャプテンの姿が見られることを期待したい。
プールC順位表(8月2日終了時点)
1位 アメリカ★ 3勝0敗 8ポイント
2位 ドイツ★ 2勝1敗 6ポイント
3位 日本★ 1勝2敗 4ポイント
4位 アルゼンチン 0勝2敗 0ポイント
★準々決勝進出確定
次戦情報
準々決勝 対戦相手未定
8月5日(月) 時間未定
テレビ
未定
ネット配信
未定
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[配信日時]
7月27日(土)午後5時 男子#1 男子#2
8月 3日(土)午後5時 女子#1
8月10日(土)午後5時 女子#2
8月24日(土)午後5時 男子#3
8月31日(土)午後5時 女子#3
9月 7日(土)午後5時 男子#4
9月14日(土)午後5時 女子#4
(TBSテレビリリースより引用)
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写真:Volleyball World