勝利の瞬間に喜びを爆発させたチヴィタノーヴァの選手たち。多くの選手が選手同士で喜び合う中、OHボットロはひとりチームの応援団席に向かって身体いっぱいで喜びを表現した。キャプテンで正リベロのバラソを怪我で欠き、負けたら終わりの背水の陣の中、ペルージャに一度マッチポイントを握られても諦めずに戦ったチームの勝利だった。
MVPはOPラグンジアだったが、彼が突出して良かったかと言われるとそうではない。11得点(アタック8、サーブ1、ブロック2)、アタック効果率0%という数字はむしろ悪い。しかし第5セット最後の3ポイントは全部彼のポイントでその点が評価されてのMVPだったのなと思う。
チヴィタノーヴァはOPラグンジアを含め試合を通して安定したパフォーマンスを披露した選手はいなかったが、場面場面でそれぞれの選手が補い合いながら戦っていた。なんせ今年のチヴィタノーヴァは若い。スタメンは2000年前後生まれの選手が中心で、さらにLバラソがいない今はスタメンの7人中4人が2000年代生まれだ。
中でも今季はOHボットロが核としてチームを引っ張っている。チームに移籍してから2シーズンは控えに甘んじていたが、3シーズン目となる今年ようやくスタメンに抜擢されチームの中心として活躍している。この試合中でもアツいプレーと積極的なコミュニケーション、喜びのパフォーマンスでチームを鼓舞し続けた。
一方のペルージャはOPベンタラが両チーム最多18得点(アタック11、サーブ5、ブロック2)、アタック効果率50%ともし勝っていたら確実にMVPだったであろう圧巻のパフォーマンスを見せた。しかしOH石川を含めたアウトサイドヒッター3人のアタック効果率を安定させられなかったのが敗因のひとつとなってしまった。
OHセメニウクは3セット目の最後に連続してスパイクミスを犯してしまい、OHプロトニツキは5セット目の最後に相手に連続ブロックを許した。
またOH石川はアタック4打数3失点と苦しんだ。特に4セット目の最初にアウトになったスパイクは手に上手く当たっておらず、いわゆる「フカした」ようなスパイクだった。このようなミスは実に彼らしくない。4セット目にベンチに戻る際に本人も首を傾げていた。
OH石川はプレーオフに入って出場機会が減ったため、そんな中で途中出場で結果を出すことは困難なことだろう。ただそれができないと益々出場機会は減る一方なので、どうにか乗り越えてほしい。ミラノ時代からのチームメイトであるMBロセルは「彼は素晴らしい選手だから、きっとよくなって次の試合で活躍してくれるよ」と試合後にコメントをくれた。

そういえばこの試合ではチヴィタノーヴァのOHレプキーがリバウンドを取り、自チームに有利な状況を作って得点を奪うという場面が少なくなかった。石川もミラノにいたころにはよくリバウンドを取って、自分も画面越しから「石川先生!」と吠えていたが、ペルージャではこの先生モードをあまり見れなくなってしまった。チームによって役割やできることが変わるので何とも言い難いが、個人的にはまたあの時のようなテクニシャンな姿も拝みたいものである。
しかし本当に各セットの中でも流れが頻繁に行ったり来たりして先の展開が全く読めない、非常に力が拮抗した手に汗握る戦いだった。ここには書ききれないスーパープレーもてんこ盛りであった。本当に僅かな差が明暗を分けるまた個人的にはイタリアリーグのプレーオフで片方のチームが3連勝して終わるのはつまらないので、今回チヴィタノーヴァが意地を見せて本当にギリギリながらも勝利したことは嬉しいサプライズだった。これぞプレーオフの姿だと思う。次回の第4戦も今回のようなバチバチのバトルを期待したい。第4戦は日本時間4月20日(日)22:10から行われる。
Photo: legavolley.it, TOSHIKI