現地時間5月16日(金)に行われたヨーロッパチャンピオンズリーグファイナル4(ポーランド開催)の準決勝に勝利して決勝進出を決めた、石川祐希所属のペルージャ(イタリア)。そのもう一つの準決勝が17日(土)に行われ、フルセットの大接戦の末にザビエルチェ(ポーランド)が勝利。この結果、決勝の対戦カードがペルージャ対ザビエルチェに決まった。
大接戦を制して勝ち上がったザビエルチェ
ペルージャが準決勝を3-0でハルクバンク・アンカラ(トルコ)に勝利したのに対し、ザビエルチェは対戦相手のヤストシェンブスキ(ポーランド)に2セットを先に取られてから(19-25, 18-25)2セットを取り返し(25-20, 25-19)、さらに15点制の第5セットを22-20という大接戦の末に勝利を収めた。
ザビエルチェはちょうど1週間前に国内リーグを終えたばかりで、ファイナル4参加チームの中で一番準備期間が短くかつ怪我を抱えた選手が多かった。そのため大方ヤストシェンブスキが勝つと予想されていたが、そうした周囲の予想を覆す大逆転勝利だった。

監督は因縁のあの人
その大逆転劇の立役者のひとりとなったのがポーランド人のヴィニャルスキ監督。昨年のパリオリンピックで勝負所でのチャレンジを複数回成功させるなどし、日本男子代表に勝利したドイツ代表の監督である。ドイツ代表との敗戦がその後の戦いに大きく影響を与えたことを考えると、石川祐希にとってはある種因縁の相手との対決になる。CL準決勝でも効果的な選手交代と戦術、そして的確なチャレンジを駆使してチームを勝利に導いた。

準決勝後のヴィニャルスキ監督コメント
「今日すでに僕たちはすごいことを成し遂げたと思ってるから、あとは自分たちのバレーボールをして、決勝という舞台を楽しみたい。今日はフルセットの厳しい試合だったし、回復の時間も多くはないけど、まずはそういうスタートを切って、できる限りベストを尽くすよ。そして今日すでに書き記した『歴史』以上に明日は美しい『歴史』を書き残したいと思ってるよ」
またパリ五輪のときのような「石川封じ」の策はあるか尋ねると、一言だけ「そうなるといいね」と回答された。
ペルージャとザビエルチェの共通点
またこの両チームにはいくつか共通点が見られる。
①サーブランキング1位
両チームともレギュラーシーズンのチーム別のセット当たりサービスエース数がリーグ1位だ(ペルージャは2.33本、ザビエルチェは1.95本)。つまり決勝戦はいかに自分たちが攻めたサーブを打ち続けかついかに相手のサーブに耐えるかが勝負の分かれ目となる。
②今季の獲得タイトルはスーパーカップのみ
スーパーカップ(イタリアではスーパーコッパ、ポーランドではスーペルプハル)とは昨シーズンの国内リーグ優勝チームやカップ戦優勝チームといった少ないチーム数でシーズン序盤に行われる大会で、どちらもそこでタイトルを獲得した。しかしその後ペルージャはコッパイタリアと国内リーグをそれぞれ準決勝で敗退。ザビエルチェはプハルポルスキと国内リーグをそれぞれ決勝で敗れてタイトルを逃した。
③CL優勝経験はなし
欧州チャンピオンズリーグでのペルージャの最高位は2位(2016/17)、ザビエルチェの最高位は5位(ベスト8、2023/24)だ。つまり決勝戦はどちらが勝っても初優勝となる。
ザビエルチェの要注意選手
バルトシュ・クフォレク

アウトサイドヒッター 193cm
ザビエルチェの攻守の要。上背は大きくないが、引き出しが多くオールラウンドなプレーが光る曲者。準決勝ではチーム最多24得点を決めて大逆転勝利に大きく貢献した。元ポーランド代表で、現在もその実力はあるが、自ら辞退しているらしい。身長は日本人選手と同じくらいだが、ちょっと力の抜けた感じや相手を嘲笑うかのような飄々とした雰囲気を醸し出していて、日本ではあまり見かけないタイプのプレイヤーかも。
ルーク・ペリー

リベロ 180cm
17歳からオーストラリア代表としてプレーする、石川世代(95年生まれ)のスーパーリベロ。ポーランドリーグではアメリカ代表のエリック・ショージらと並びリーグNo.1リベロに必ず名前が上がる実力者で、特に広い守備範囲と正確なサーブレシーブと第2のセッターとしての正確なセッティングが魅力。つまり日本代表だと山本よりも小川寄り。ちなみにリベロだが最高到達点が330cmあり、かつてポーランドリーグでプレーしていた日本人選手のM氏は「ペリーやばいです、フリースパイクが(笑)」と彼のウォームアップに注目することをおすすめしてくれた。
準決勝後のペリー選手のコメント
「ペルージャは素晴らしいチームで、選手もレベルが高い。いつも通り、試合の鍵はサーブとレセプションになると思うよ。でも正直、今はまだペルージャのことはあまり考えられてないよ(笑)。今夜から考えるよ。」
優勢なのはペルージャ、しかしザビエルチェには勢いと地の利がある
優勢なのはペルージャだ。ペルージャもザビエルチェ同様にセメニウクら怪我人を抱えて万全の状態ではないが、サイドアタッカー3人の決定力はペルージャに分がある。お互いにサーブが走ってハイボール勝負となった場合はペルージャがかなり有利になるだろう。
そして何よりペルージャは準決勝をストレートで勝ってかつ1日休息日があった一方、ザビエルチェはフルセット勝利のうえ休みのないまま連戦しなければならない。これによる身体的なコンディションの差は避けられないだろう。
しかしザビエルチェは今大会、予選ラウンドから唯一無敗で勝ち上がってきており(ペルージャは予選でハルクバンクに1度敗れた)、また準決勝を劇的な大逆転で勝利している。つまり彼らは「ノっている」といっていいだろう。もちろん地元ポーランドの熱いサポーターたちもザビエルチェを応援するに違いない。時にスポーツは勢いや流れが疲労を凌駕することもある。
ペルージャかザビエルチェか。
どちらにとっても勝っても負けてもシーズン最終戦。全てをぶつけて、最高のパフォーマンスの最高の試合を見せてほしいと思う。
CEV欧州チャンピオンズリーグ決勝は、日本時間5月19日(月)朝3時から。日本からはEuroVolleyTVによるインターネット配信で視聴可能(有料)。
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Photo: CEV