5月10日(土)にポーランドプルスリーガ決勝第4戦でルブリンがザビエルチェに3-0(25-22, 25-15, 25-18)で勝利し、プルスリーガ初優勝を決めた。
試合レポート
スタメン(P1から)
ルブリン:OHサヴィツキ、MBマッカーシー、Sコメンダ、OHレオン、MBグロズダノフ、OPササク、Lタレス
ザビエルチェ:OHクフォレク、MBビエニエク、OPグロゼル、OHラッセル、MBズニシュチョウ、Sタヴァレス、Lグレゴロヴィチ
第1セット:ルブリンの終盤の猛攻とチャレンジ成功
序盤は競った展開となったが、OHクフォレクのサーブからOPグロゼルがアタックを決めるなどしてブレイクを重ねたザビエルチェが8-12と前に出る。その後もOHラッセルのスパイクなどでザビエルチェが14-17とリードを保つ。しかしOHサヴィツキのブロックやサービスエースで18-18とルブリンが追いつく。その後OHレオンのサーブからOPササクがスパイクを決めて23-22とルブリンが逆転すると、さらにチャレンジに成功して24-22とセットポイントを握る。最後はOHレオンがサービスエースを決めて25-22でこのセットをルブリンが取る。
第2セット:ルブリンのサーブとスパイクが絶好調
序盤からMBマッカーシーが3連続エースを決めるなどして6-1とルブリンがリード。その後もOHサヴィツキのサーブやMBマッカーシーの強力なサーブからOHレオンがスパイクを決めるなどして17-7とルブリンが点差をさらに広げる。ザビエルチェは選手交代で状況の打開を図るも時すでに遅く、OHレオンのスパイクで24-14とセットポイントを握ると、最後はOPグロゼルのサーブがミスとなり25-15でルブリンが危なげなくセットを連取。
第3セット:ルブリンの勢いが止まらない
出だしはOPグロゼルのスパイクなどで2-4とザビエルチェが先行する。しかしOPササクのサーブからエースやOHサヴィツキのスパイクで4連続ブレイクを決めて9-6とルブリンが逆転。さらにOPササクのスパイクやOHレオンのサービスエースで19-12とルブリンが点差を広げる。そしてOHサヴィツキのパイプ攻撃で24-17とマッチポイントを握ると、最後はOHワバのサーブがミスになり25-18でこのセットを取り切ったルブリンが3-1で勝利した。
試合のポイント

①運命を分けた1セット目のチャレンジ
1セット目は、終盤23-22の場面でザビエルチェのクイックが決まって23-23と並んだが、ルブリンのチャレンジでSタヴァレスにタッチネットが見つかり24-22となって、最後OHレオンのエースでルブリンが取った。ここでチャレンジがなければOHレオンのサーブも回ってこないし、ザビエルチェにもまだまだチャンスがあっただろう。1セット目のザビエルチェは第3戦で勝利したときの勢いをまだ残していたので、ここでセットを先取できていればその後の試合内容が大きく変わっていた可能性があった。しかしあの場面でわずかなタッチネットを見逃さなかったルブリンがすばらしかった。チャレンジの上手さもトップレベルではもう必須のスキルと言ってよいだろう。
②ルブリンのサーブ&ブロック
とにかくルブリンのサーブがすごかった。エースを3本決めたMBマッカーシーやOPササクを筆頭にチームで合計9本のエースを挙げた。またサーブで直接点が取れなくてもブロックが待ち構えており、3本決めたOHサヴィツキとMBグロズダノフを筆頭に計8本のブロックポイントを決めた。ザビエルチェからしてみれば、頑張ってサーブをあげたかと思えば高いブロックが待っているというルブリンのサーブ&ブロックを攻略できなかった。
③ルブリン、ハイボールでも高いアタック決定率
ザビエルチェもサーブがいいチームで、ルブリンのサーブレシーブ成功率35%も決して高くはなかった。しかしザビエルチェに1本もサービスエースを許さず、またサーブレシーブが乱れてハイボールになっても、特に1セット目終盤以降サイドアタッカーの3人(OHレオン、OHサヴィツキ、OPササク)の決定率が非常に高く、チームアタック効果率は2セット目が73%、3セット目が65%と非常に高かった。ザビエルチェは彼らにプレッシャーをかけることができずどうしようもない状況だった。
注目選手の活躍
Sマルチン・コメンダ(ルブリン、MVP)

2得点(アタック1、ブロック1)、チームアタック効果率50%
チームを初優勝に導いた主将&司令塔。チームのサーブレシーブ成功率は決して高くはなかったが、サイドへ丁寧なセットを供給してハイボールでも高いアタック決定率を維持し続けた。またサイドの3人、OHレオン、OHサヴィツキ、OPササクに試合全体でバランスよくセットを供給して相手に的を絞らせなかった。今年の代表ではメインセッターとしての活躍も期待されている。
OPケヴィン・ササク(ルブリン)

14得点(アタック11、サーブ3)、アタック効果率68%
両チーム最多14得点、アタック効果率68%と大車輪の活躍だったササク。第3セット序盤でザビエルチェに流れが傾きそうな場面では自らのサーブでその流れを断ち切った。ザビエルチェに敗れた第3戦ではアタックが決まらず1セット目途中での交代を余儀なくされたが、この試合では見事に修正し勝利に大きく貢献した。どうしてもOHレオンに注目されがちだが、OHサヴィツキとともにこの選手の成長がプレーオフでのルブリン躍進のピースだった。
OPゲオルギ・グロゼル(ザビエルチェ)

13得点(アタック12、ブロック1)、アタック効果率26%
怪我をしたOPブトリンの代替選手として決勝第2戦から急きょベンチ入りしたドイツ代表の大ベテラン(40歳)。第2戦ではまだSタヴァレスとのコンビネーションに苦労していたが、第3戦では本来の能力を発揮してチームの勝利に大きく貢献。ただこの試合ではアタックではルブリンのブロックに苦しみ、サーブでは思うような効果を上げられなかった。しかし怪我人続出で絶望的だったザビエルチェの希望としてチームに道をしめしたことは間違いない。
トシキのコメント
ザビエルチェのOPブトリンが離脱した時点で3連勝でルブリンが優勝するだろうと誰も言っていたが、その予想に反してザビエルチェが第3戦に勝利したことで試合前はどちらが勝つかわからない状況だった。
そしてルブリンで行われた第4戦。地元のチームが優勝する姿をホームで見ようとチケットは完売。前回の第2戦は販売開始26秒で完売したそうだが、今回は14秒で完売したらしい。当然会場の熱量もこれまでとは比較にならないくらいに高かった。
第1セット中盤まではザビエルチェペースで、ルブリンはOHレオンのサーブが直接観客席に飛んでいくなどらしくないミスも少なくなかった。OPグロゼルのサーブ時には最大限のブーイングが飛んだ(笑)。
しかし上述したように、1セット目終盤以降は完全にルブリンペースで、2、3セット目はあっという間に試合が終わった。会場全体が歓喜に包まれた。選手、スタッフみんなで喜び合い、応援団とコールした(あと試合用ネットの「LUBLIN」と書かれた部分を切り取っていた(笑))。表彰式のあとは選手全員客席まで上がってスタンドを一周しファンと交流した。
一方敗れたザビエルチェの面々は、準優勝とは言えど敗者の表情で、表彰式後にそそくさと会場を後にした。
おそらくシーズン開始時にルブリンが優勝すると予想できた人いなかっただろう。確かに昨シーズンは5位とそこそこの成績で、レオンというスーパースターを獲得したチームだから多少の期待値はあったかもしれない。それでもせいぜいベスト4止まりだったし、クラブ自身も現実的な目標としてベスト4を掲げていた。
しかしチームはその上を行った。それにはやはりレオンの存在が大きかっただろう。ポーランドカップ準決勝で敗れたあとに「クラブの目標には達しているけど、個人的にはタイトルを取りたいし、チームにもそれができると伝えている」という旨のコメントをしてもらった。彼が自分の夢をチームにも見せて、そしてそれが本当に現実になったのだ。
ただレオンという選手がそれだけの選手であることには疑いの余地はない。プレーがすごいのはもちろんだが、彼のふるまいを直接見たり彼と直接話すたびにその人格のすばらしさを感じずにはいられないからだ。
レオンをはじめ主力選手のほとんどは来シーズンも残るようなので、次のリーグとチャンピオンズリーグでも注目したい。

関連リンク
試合のスタッツ
https://www.plusliga.pl/games/action/show/id/1104130.html#stats
Photo: TOSHIKI, plusliga.pl