現地時間5月7日(水)にポーランドプルスリーガPO3位決定戦ワルシャワ対ヤストシェンブスキ・ヴェンギェルの第3戦が行われ、ワルシャワが3 -2(21-25, 25-19, 25-22, 25-23, 15-12)で激闘を制し、リーグ3位を決めた。
第2戦の記事でも書いたように、3位決定戦2連敗かつ欧州チャンピオンズリーグファイナル4を控えるヤストシェンブスキにとって、試合に勝てばその分チャンピオンズリーグまでの準備時間が減ることを意味していた。つまりモチベーションの面でやや難しいと思われていたため、第3戦はワルシャワが比較的楽に勝てるのではないかと思われた。
ウォームアップ時の選手たちも大半はリラックスした雰囲気で、他チームの選手同士で和やかに話をする姿も見られた。来シーズンの欧州チャンピオンズリーグ出場権がかかる重要な試合にもかかわらず、それほど緊迫した雰囲気は感じられなかった。
それでも今シーズン最後のホームゲームとなるかもしれないチームの姿を見届けようと地元ヤストシェンブスキのファンを中心に2500人弱が会場に詰め掛けていた。そしてそのファンの思いに応えるかのように、大方の予想に反して試合は白熱した展開となった。

試合レポート
第1セット:ヤストシェンブスキのサイド3人が高い攻撃力を発揮
序盤にホームのヤストシェンブスキがOHカールのスパイクやサービスエースで5−9とリードすると、その後もOHフォルナルやOPカチュマレクらサイド陣が高い決定率のスパイクでヤストシェンブスキが得点を重ねる。ワルシャワはOHブラントを中心に攻めるも思うようにブレイクが取れず、最後はそのOHブラントのサーブミスで21-25としたヤストシェンブスキが先取。
第2セット:OPヴェベルがスパイク、サーブ、ブロックで8得点
中盤まで競った展開となり、ワルシャワはOPヴェベルが高い決定率で得点を重ねた一方、ヤストシェンブスキはOHフォルナルやMBフベルらで得点し16-16と試合が進む。しかし終盤にOPヴェベルとMBコハノフスキのサービスエースなどでワルシャワが突き放して25-19でセットを取り返す。
第3セット:ワルシャワが6本のブロックで主導権を握る
OHブラントらのブロックでブレイクを重ねたワルシャワが7−3序盤からリードするが、ヤストシェンブスキがOHフォルナルのスパイクなどで得点して16-15と1点差に迫る(途中OHフォルナルのパイプ攻撃がOHシャルプクの股間に命中してOHシャルプクが倒れる)。さらに終盤に21-21と同点になるが、その後途中出場のMBセメニウクのブロックとOPヴェベルのスパイクで得点したワルシャワが25-22でこのセットを取り切る。
第4セット:Sトニウッティのクイック祭り、ミドルだけで13得点
MBブレーメのスパイクなどでヤストシェンブスキが連続得点を決めて0-4とリード。そこからOHブラントを中心に得点するワルシャワに対し、ヤストシェンブスキのSトニウッティはMBブレーメとMBフベルのミドル二人を積極的に使って得点をサイドアウトを取っていく。その後MBコハノフスキのブロックやスパイクで11-12とワルシャワが1点差まで迫る。しかしその後もクイックを中心に攻撃を展開したヤストシェンブスキが、最後もMBフベルのクイックで締めて23-25でこのセットを取ってフルセットに持ち込む。
第5セット:連続得点の応酬もOPヴェベルが試合を決める
OHシャルプクのサービスエースに始まり、MBコハノフスキのスパイクなどで得点を重ねたワルシャワが6-1と出だしから大きくリード。ただその後ヤストシェンブスキがリリーフサーバーSフィノウリのサーブからエースやMBフベルのブロックなどで連続得点を決めて8-9と一気に逆転する。
しかし終盤にOPヴェベルの強力なサーブからチャンスを作ったワルシャワがOHシャルプクのスパイクなどで得点し、さらにOPヴェベルのサービスエースも決まって14-11とこちらも一気に再逆転でマッチポイントを握る。そして最後はOHシャルプクがスパイクを決めきり15-12でこのセットを取ったワルシャワが3-2で試合に勝利。この結果、3位決定戦はワルシャワの3戦3勝となり、ワルシャワが3位に輝いた。
MVP:OHトビアス・ブラント

22得点(アタック18、サーブ2、ブロック2)、アタック効果率38%
この試合はアタック、サーブ、ブロック、ディフェンスとすべての面でチームを支え、またチーム最多タイの22得点をあげるなど大車輪の活躍。同じく22得点をあげたOPヴェベルとのドイツ人コンビで存在感を見せた。
試合のポイント
①サーブ&ブロックが機能したワルシャワ
ワルシャワのサーブは1セット目からよく走っていたが、そのときはヤストシェンブスキのOHフォルナルら強力なサイドアタッカーに得点を許した。しかし2、3セット目はサーブ&ブロックが上手く機能してブレイク率を上げることに成功した。結果的にワルシャワはこの試合でサーブエース8点、ブロックポイント10点を決めた。ヤストシェンブスキからのサーブのプレッシャーも大きかったが、ワルシャワはOPヴェベルらサイド3人の決定率が高くハイボールでも得点できた。
②戦い方を変えてフルセットに持ち込んだヤストシェンブスキ
サイドアタッカーの活躍で1セット目を取ったヤストシェンブスキだったが、その後彼らの決定率が落ちる。そこで4セット目にSトニウッティは多少サーブレシーブが乱れてもMBブレーメとMBフベルの両ミドルにボールを集め、両ミドルもそれに応えて次々と得点を決めた。結果このセットは彼らのアタックだけで11得点、ワルシャワのミスを除いた半分以上の点数を稼いだ。またこれに加えてワルシャワはOHブラント以外のサイド2人の決定力が落ちてサイドアウトに苦しんた。
③試合を決めたOPヴェベル
運命の第5セットはワルシャワが6-1とリードしてからヤストシェンブスキが8-9と逆転するというジェットコースターのような展開だったが、最終的に試合を決めたのはOPヴェベルだった。9-11の場面でヤストシェンブスキはサーブでワルシャワを崩したものの、OPヴェベルがハイボールを決めきる。そして直後の彼のサーブから2本相手に直接返球させ、1本エースを決めるなど4連続ブレイクで一気に14-11とチームをマッチポイントまで導いた。個人的には彼がMVPかなと思う。

トシキのコメント
正直ヤストシェンブスキはあまりモチベーションがないだろうからワルシャワが楽に勝てるのではないかと思っていたが全然そんなことはなかった。
ワルシャワはもちろん、ヤストシェンブスキも本気だった。点数を決めれば吠えるし、審判が微妙な判定をしたら詰めた(笑)。ただモチベーションを保つのが難しかったのは事実だろう。特に今シーズン限りでチームを去る選手にとっては来季のチャンピオンズリーグ出場権獲得よりも今季のチャンピオンズリーグに全力を尽くしたいはずだ。
それでもこの日のプレーにはそうした迷いはあまり見られず、ホームゲームに来てくれた地元ファンのためにもできる限りの最高の試合を見せようとしていたと思う。特に4セット目のミドル祭りは本当に見ていてすごかったし面白かった。5セット目中盤での逆転も見事だった。

ただ最後の5セット目終盤でワルシャワの3位への思いの強さが出たのではないかと思う。ヤストシェンブスキはリーグ戦こそ準決勝で敗れたが、カップ戦は優勝、チャンピオンズリーグもファイナル4を控えている。一方のワルシャワはリーグ戦準決勝、カップ戦準決勝、チャンピオンズリーグ準々決勝とどれも敗れて当初の目標を達成できなかった。
またワルシャワは8シーズン在籍した主将のMBヴロナと9シーズン在籍したMBコヴァルチクが今季限りで現役引退を表明していたので、この2人のクラブの功労者のためにもリーグ戦の銅メダルは何がなんでも手にしたかった。そしてその思いが実った。
試合後に行われた表彰式では表彰台の前にふたりで立ち、3位のトロフィーを一緒に掲げて喜んでいた。勝利の喜びの笑顔の中で、その瞳は少しうるんでいるように見えた。

そういう意味でもワルシャワにとって来季はチームの大きな転換点となるだろうが、来季こそ今季果たせなかったカップ戦とリーグ戦での決勝進出とチャンピオンズリーグファイナル4進出を成し遂げてほしい。
またヤストシェンブスキについては、結果的にチャンピオンズリーグまで多く時間を取ることができるようになったので、本番で最高のバレーボールをするために準備をしてもらいたい。
関連リンク
試合のスタッツ
https://www.plusliga.pl/games/action/show/id/1104131.html#stats
Photo: TOSHIKI, plusliga.pl