コラム

欧州チャンピオン・ザクサとその強さ

2021年5月5日

 

CL優勝までの道のり

予選リーグ 6勝0敗 1位通過

準々決勝 vsチヴィタノーヴァ(イタリア)
1勝1敗 3:1(23:25, 14:25, 25:21, 25:21), 0:3(22:25, 24:26, 24:26)
ゴールデンセット 16:14

準決勝 vsカザン(ロシア)
1勝1敗 3:2(22:25, 22:25, 29:27, 25:22, 16:14), 2:3(17:25, 25:16, 25:21, 28:30, 18:20)
ゴールデンセット 15:13

決勝 vsトレント(イタリア)
3:1(25:22 25:22 20:25 28:26)

こうして改めて結果を見てみると、やはり決勝は勝つべくして勝った感がある。特にチヴィタノーヴァとの第2戦を0:3で落としてからのゴールデンセットをデュースの末に勝ち切ったときには、ネット観戦していた筆者も震えが止まらなかったし、このチームは本物だと思った。その後カザン戦で何度も窮地に追い詰められてもなぜか安心して見ていられたし、選手たちの目にも確固たる自信が芽生えていたと思う。

チームの強さの秘密

ここでザクサの強さを支えたポイントを3つに絞って紹介したいと思う。

①高い守備力

ザクサは守備型のチームだ。つまりブロック・ディグを総合したトータルディフェンスが非常に優れている。その証拠に国内リーグの1セット当たりのブロック本数が1位(2.57本)となっている。正直言ってザクサは高さのあるチームではない。セッターは183cmであるし、ミドルの2人も2m前後、サイドも2mない。ポーランドリーグ内でも平均身長は小さい方だと思うが、それでここまでのブロックの数字を残せているということは驚きだ。またデータは見つけられなかったが、リベロのザトルスキを筆頭にディグもかなりの割合で上がるし、弾いたりしまったボールに対しても全員が走って飛び込んで最後までボールを追う。つまりコート上全員の守備意識がとても高いのだ。だから僅かなチャンスも粘り強く掴み得点に変えられる。

②絶対的エースはいないが高いアタック決定率

ザクサに絶対的なエースはいない。しかし、5人のアタッカー全員ともミスが少なく引き出しが多いし、またセッターのトニウッティによるトスの質とアタッカーの選択が適格なので、常にチームとして高いアタック決定率を誇っている。一般的にチームのベストスコアラーは毎試合同じ選手であることが多いが、ザクサはサイドの3人うち誰でもその試合のベストスコアラーになり得る。したがって例え誰かが崩されたり調子が振るわなかったとしても、他の全員で十分にカバーできるチーム力を持ち合わせている。

③レジリエンスの高さ

バレーボールというスポーツはそのルール上、野球でいうホームランのようなものはないので、一度相手にリードを許してしまうとそこから追いつき追い越すことがとても難しい。むしろ現代バレーではリードしているチームは心理的に強いサーブで攻めやすくなるので、点差が広がってしまう場合の方が多い。特にセット中盤以降に3点以上点差があるとそのセットを逆転で取ることはかなり厳しい。しかし、ザクサはそのような状況を何度も覆してきた。点差が広がろうとも、動ずることなく、逆転の機会を伺って粘り強くプレーをしていた。このような試合中に立て直す力、つまりレジリエンスの高さが顕著に見受けられた。

この他にも攻めるサーブやS1ローテの強さなど様々な強さの秘密はあるが、個人的には上記の3つを強調したい。

筆者コメント

これまでのCLの優勝チームといえば、ユアントレーナやソコロフを擁した2019年のチヴィタノーヴァや、レオンとミハイロフを率いて4連覇したカザンなど、スパイカー陣が豪華で派手なチームが多かった。しかし今回のようにどちらかというと地味で技巧派で代表チームでもそれほど活躍のないサイド陣を率いたチームが優勝したことは、何か新たな時代の到来を感じさせる。

また今年のザクサというチームは、今後日本代表チームが目指すべきチーム像を示しているのではないかと思う。平均身長が多少低くても、チーム力でスーパースター軍団に勝てると。そんな希望を示してくれるようなチームだったのではないだろうか。このチームをもっと多くの人に見てほしいと思う。

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