9月12日からフィリピンで開催されているバレーボール世界選手権2025男子大会。
大会前に世界ランキング5位だった日本は表彰台を目標に今大会に臨んでいました。
しかし蓋を開けてみると初戦のトルコ、第2戦のカナダとランキングが下のチームに1セットも取れず2連敗を喫して早々に予選敗退するという、大方の予想を大きく外れた波乱の結果に終わりました。
しかし今大会の予選ラウンドで予想外の結果となったのは日本だけではありませんでした。
以下では今年の世界バレー男子大会予選ラウンドで起きた波乱を大きく3つに分けて解説します。
①日本、フランス、ブラジル、ランキング上位国の予選敗退
予選ラウンドでは日本だけでなく、優勝候補だったフランスとブラジルもまさかの敗退となりました。
フランスは東京、パリとオリンピック2連覇を果たしているチャンピオンチームで、大会前の世界ランキングは4位と同じプールCの4チームの中で最上位でした。
また今大会を最後に代表を引退する選手が数名いたため、選手たちがこの大会に賭ける思いも強かったでしょう。5位に終わった今年のネーションズリーグよりもメンバーを揃えて万全の状態で臨んでいたと思います。
しかし初戦の韓国戦こそ3-0で快勝したものの、続くフィンランドとアルゼンチンにいずれもフルセットの激闘の末に敗れ、プールC3位で予選敗退となりました。

ブラジルは大会前世界ランキング3位で、今年のネーションズリーグでは予選ラウンド1位、最終的に銅メダルを獲得するという好成績を収めていました。
そして今大会は初戦の中国を3-1、次のチェコを3-0で破り予選突破をほぼ確実なものにしていましたが、最後のセルビア戦でまさかのストレート負け。
更にセルビア、チェコ、ブラジルの3カ国が2勝1敗で並び、ブラジルはセット率でチェコにわずか1セット及ばず、無念の予選敗退となってしまいました。ブラジルが世界選手権の予選ラウンドで敗退したのは史上初めてのことでした。

②ヨーロッパ中堅国の快進撃
そうしたランキング上位国、優勝候補たちを倒して快進撃を演じたのが、世界ランキングが10〜20位代のヨーロッパ勢でした。
まず初戦で日本に3-0で勝利したトルコ(※トルコは欧州バレーボール連盟管轄)。大会前の世界ランキングは16位とプールG内で3番目でしたが、そこからリビアとカナダにも連勝してプールG1位で決勝トーナメントに進みました。
フランスを下したフィンランド。大会前の世界ランキングは18位でトルコ同様にプールC内3番目でした。ネーションズリーグは不参加でしたが、今年のヨーロッパゴールデンリーグ(ネーションズリーグに参加しないヨーロッパのチームが参加する大会)で優勝するなど実力を付けていました。フィンランドはフランスを下したほか、アルゼンチンともフルセットを演じ、プールC2位で予選突破しました。

プールDでは27位だったポルトガルが今年のネーションズリーグでベスト8だったキューバを下して2位通過。ポルトガルは2018年にチャレンジャーカップを制して2019年にネーションズリーグに参加したもののすぐに降格し、その後は目立った結果を残せていませんでしたが、ここでサプライズを起こしました。
大会前に日本との壮行試合を戦ったブルガリアも波に乗っています。こちらも15位でプールEでは3番目のランクのチームでしたが、上位のドイツを3-0、スロベニアを3-2で撃破。最後のチリにも危なげなく3-0で勝利し、プール1位で決勝トーナメント進出を決めました。
そしてプールFで今年のネーションズリーグ準優勝で世界ランキング2位のイタリアを下したのが、大会前17位だったベルギー。2023年のパリ五輪予選で出場権獲得まであと一歩だったチームが、来年のネーションズリーグ初参戦を前に世界に実力を示しました。ウクライナとアルジェリアにも3-0で勝利し、イタリアを抑えての1位通過となりました。

プールHでは12位だったセルビアと22位だったチェコが3位のブラジルと三つ巴の戦いを演じて決勝トーナメント進出を決めました。先にチェコがセルビアを3-0で下し、ブラジルがチェコを3-0で下したため、ブラジルにも負けるだろうと思われていたセルビア。しかし蓋を開けてみると、セルビアがほぼ完璧な試合運びを見せて3-0で勝利しました。
世界選手権は前回まで参加チーム数が24でしたが、今年から32チームに拡大。それに伴い多くのヨーロッパの中堅国が参加した結果、このような前代未聞の波乱の予選ラウンドとなりました。
またヨーロッパのレベルの高さが改めて示された大会ともなりました。
③開催国フィリピンの大健闘
中堅ヨーロッパ勢の活躍と共に忘れてはならないのが開催国フィリピンの活躍です。
大会前のフィリピンの世界ランキングは77位。プールAは開催国優遇の甲斐もあり世界ランキング1桁台のチームがいなかったとはいえ、13位のイラン、23位のエジプト、更に40位のチュニジアとも実力差は大きく、大方の予想では1勝どころか1セット取れるかどうかも怪しいところでした。
案の定、開幕戦となったチュニジアとの試合は0-3で敗退。
しかし続くエジプトに3-1で勝利すると、勝てば決勝トーナメント進出のかかったイラン戦でもフルセットの激闘を演じます。しかも5セット目にはデュースの末に先にマッチポイントを取ってフィリピンが一度勝利を手にしかけましたが、イランのチャレンジが成功して幻の勝利となりました。
最終的に22-20で5セット目をイランが取り切り、フィリピンは惜しくもプールA3位で予選敗退。しかし世界ランキング70位台だったフィリピンがエジプトを下し、イランをあと一歩まで追い詰めるなど誰も想像できなかったでしょう。

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Photo: Volleyball World