Toshiki's comment
決勝戦の前に予想記事を書いたが、ことごとく外れた(笑)。
まず準々決勝、準決勝と不調だったレオンが見事な復活を遂げた。
1セット目からアタックで8得点、アタック効果率58%と大車輪の活躍。高さ、キレ、決定力。レオンらしさがそこに戻っていた。セッターのコメンダも、調子のいいことを確認したからかこの機を逃すまい、彼をとことん乗せようというかの如く積極的にレオンにセットを供給した。
ただコメンダもレオン一辺倒というわけではなく、上述のとおりミドルのコハノフスキやセメニウクのパイプ攻撃も積極的に織り交ぜて真ん中からも積極的に攻撃を仕掛けていた。
一方で準々決勝、準決勝と神がかった活躍を見せていたオポジットのササクはやや影を潜めたが(ただサーブとブロックはとてもよかった)、セメニウクの安定感は素晴らしかった。リベロのポピフチャクもよく拾っていたと思う。
ミドルのノヴァクがコメンダとのコンビネーションがまだ不安定で得点できなかったが、交代で入ったヤクビシャクがスパイクとブロックで存在感を放った。
つまりポーランドは強かった。本当に強かった。イタリアに2セット目の悲劇がなくてもおそらく優勝していたと思う。

しかし上述の2セット目のローテーションミス(今回の事象を正しく何と呼べばよいか難しいが、とりあえず「ローテーションミス」とする)が試合に与えた影響は計り知れないだろう。
どういう経緯であのような甚大なミスが起きてしまったかは定かではないが、イタリアチームのプレーを困難としたと同時に大きな精神的ストレスとなったに違いない。セッターのジャネッリは明らかに苛立っていたおり、それがプレーにも見て取れた。
そして、そうしたメンタル面への負の影響はセット間でも完全にぬぐい切れず、むしろ3セット目でさらに大きなサービスプレッシャーをかけてきたポーランドに対して、ほとんど何も対抗することができなかった。
したがって個人的には2セット目にローテーションミスが分かった時点で、控えセッターのスベルトリを投入していつも通りのシステムでバレーボールをやれるようにするべきだったのではないかと思う。ミケレットを下げたくなければ、オポジットのリヒリツキをアウトサイドヒッターのボットロ(2セット目の彼はとてもいいプレーを見せていた)と変えて3OHシステムで臨んでもよかったはずだ。
少なくともあのままの状態よりは機能しただろうし、セットを取られていたとしても選手へのストレスの蓄積は少なかったのではないかと思う。ただすべて机上の空論ではあるが。
とにかく個人的には2セット目以降はまともに試合を見ていられなかった。集中力を保てなかった。
1セット目にあれほど素晴らしい試合を見せてくれていたイタリアチームが見る影もなかった。
1セット目、大黒柱ミケレットはポーランドのディフェンスの前に苦しんでいたが、ラヴィアは元気だったし、イタリアのサーブが走れば逆転のチャンスはいくらでもあるだろうという内容だった。
しかし2セット目以降まったく別の試合となってしまった。大会の中でもっとも盛り上がり、最もハイレベルで、最もエンタメ性の高い試合になるはずだった決勝戦がこのような形になってしまったことは本当に残念でならない。
例えイタリアベンチが間違ってローテーションを提出していたとして、有識者から見れば明らかにおかしなローテーションであるのだから、審判団からイタリアチームに確認を促したりできなかったのだろうか。
会場のお客さんに、配信で見ている世界中のバレーボールファンに最高の試合を届けることを考えれば、それくらいの配慮くらいはあってもよかったのではないかと思ってしまう。
とにかくイタリアチームはこの悔しさを世界選手権でぜひとも晴らしてほしい。

優勝したポーランドチームには本当におめでとうと言いたい。元々の休養メンバーに加えてファイナルラウンド期間中を含め多くの怪我人を出し、本来の想定とは違うメンバーで挑まざるを得なかった今回のファイナルラウンドだったが、結果的に優勝を果し改めてポーランドの選手層の厚さを世界に知らしめた。
ファイナルラウンドではササクの活躍がすばらしかったし、第3週から急きょキャプテンを務めたコハノフスキも役割を見事に全うした。MVP受賞も本当におめでとう。
世界選手権ではややメンバーの変更があるだろうが、優勝候補筆頭になることには変わりはないだろう。また日本にとっては勝ち進めば遅くとも準々決勝で当たる相手となるので、日本とポーランドの再戦も楽しみにしておきたい。

今年の表彰式について一言
試合後に優勝チームしか表彰されなかったことについても苦言を呈したい。
おそらく時短、予算削減のためであろうが、2位と3位のチームに対してとてもリスペクトを欠いた行為のように見えた。
特に試合終了後のポーランドの表彰式を眺めるイタリア選手たちの姿には胸が痛んだ。彼らは決勝戦まで勝ち上がってきた素晴らしいチームであるし、今回の銀メダルは彼らにとってVNLで最初のメダルだったのだ。それをこのような形で祝われるのは見ていて辛かった。
女子は開催国のポーランド側の働きかけでこのような事態を回避して2位、3位のチームにも表彰式があった。
来年は昨年同様に個人賞の表彰と1位、2位、3位の表彰式もしっかり行ってほしい。
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Photo: FIVB